yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『冬ぼたん』劇団美山@池田呉服座2月24日夜の部

お芝居『冬ぼたん』
大衆演劇舞踊曲の定番、「冬牡丹」を下敷きにした(?)お芝居でした。この日はまったくEvernote に内容を打ち込まなかったのでうろ覚えですが、筋は以下です。

芸者(ミカ)に惚れ込んだ男たち3人が彼女の身請けを争っている。土地の親分の肉丸(祐樹、肉丸再登場!?)が商家の若主人(京馬)にすごんでいるところに、一匹狼の遊び人(座長)が割って入る。彼も芸者に惚れ込んで通い詰めていたのだ。親分が立ち去った後、遊び人は若主人に殴り掛かるが、芸者がそれを身を挺して止める。芸者のお腹の中に若主人の子供が宿っていると知った遊び人は、潔く身を引くことにする。そして芸者の身請けの金として用意していた金子をそのまま若主人に渡す。

1年後、肉丸一味が若主人を訪れて、今は若主人の妻になっている元芸者の子供が、実は遊び人の子供だという虚偽の話をする。はじめは信じない若主人だが、やがて疑惑を持ち始める。讒言が功を奏したとみてとり、肉丸たちは帰って行く。

もと芸者仲間で妹分だった遊び人の妹(エクボ)がいまでは子供の子守りをしているのだが、その子守りと一緒に見物に出かけていた妻が帰宅する。その妻を若主人が『子供の父親が自分ではなかった」といって詰る。否定する言葉に耳を貸さず、離縁するという。泣き崩れる妻。

妹が世話になっている礼をしようとして、遊び人が商家を訪ねてくる。泣いている妻をみて驚き、事情を聴いて腹を立てる。そして若主人に談判をするが、若主人は信じない。怒った遊び人が短刀を出し彼に斬り掛かったのを、またもやその妻が身を挺して助ける。心を動かされた遊び人は刀を納めた上、若主人に道理を説いて聴かせる。やっと目が覚めた若主人。そこへ首尾を確認しに肉丸一味がやってきたので、遊び人は彼らを斬り殺す。

ちょっとうがった解釈をすれば、遊び人が1年後に訪ねて来たのは、やはり「冬牡丹」の歌通り、未だに芸者への想いを絶ちきれないからなんでしょう。そして彼女の幸せを願う気持ちと、どこか幸せでないことを願う気持ちとが交錯していた。そこにネガティブな気持ちが実現したかのような場に行き当たり、自分のその気持ちを否定する衝動が、「若主人に振り上げた刀」となったということになるのではないでしょうか。たかし座長、こういう複雑な内面を推察させるように演じられたということです。

このお芝居で光っていたのは若旦那役の京馬さんでした。こういう役回りがニンにあっているということなのでしょう、多くのお芝居でヤサ男の役を演じられていますが、この日の役柄では、いつもより心理に踏み込んだ演技でした。

ミカさんの芸者、後の妻役もとても説得力がありました。ミカさんは芸者をよく演じられるのでこの役がハマっていたのはもちろんですが、虐げられても夫を思う妻という役どころも上手く演じられました。劇団美山の主要な脇役を演じられる役者さんたち、すごいといつも感心するのは観客の視線が集まっていないときでもきちんと役になりきり、「演じる」ことを忘れていない点です。