yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「アクションから生まれた革命 〜ジャクソン・ポロック〜」@日曜美術館、NHK eテレ12月11日

さすが千住明さん、先週の杉山寧に続けてポロックとは。意欲的である。司会者を誰にするかというのはこういう番組作りにはとても重要だとあらためて認識した。芸術家であるに超したことはない。

NHKのサイトには以下のような解説がついている。

ピカソを超えた!戦後間もないアメリカに、現代美術の扉を開いたと語り継がれる伝説の画家が登場した。ジャクソン・ポロック(1912-1956)。その絵には、形と呼べるものは一切描かれていない。
あるのは、ほとばしるペンキの飛まつ、そしてキャンバスを縦横無尽に駆け抜けるような線。キャンバスをイーゼルからはずし、床に広げる。筆は使わず、棒やコテで塗料を滴らし、撒(ま)く。全身を使って描く姿から「アクション・ペインティング」と呼ばれた。美術の常識を根底から覆し、アートの中心をパリからニューヨークへと移すきっかけを作った20世紀アメリカの最も偉大な画家の一人だ。

ポロックはなぜ、形を描くのをやめたのか? ポロックはなぜ、筆を使わずに、塗料を滴らしたのか?さまざまな葛藤や苦しみの中で生み出された「絵画の革命」、その背景には何があったのか。

抽象を究め、自分のスタイルを確立した後も、ポロックはそこにとどまることなく、さらなる進化を追い求めた。しかし、アルコールに溺れ、その人生は破滅に向かう。交通事故により、44歳の若さで、この世を去ったポロック。いま日本で大規模な展覧会が開かれているのを機に、傑作の数々を紹介。アーティストの石井竜也さんをゲストに迎え、その魅力に迫る。

ポロックを初めてみたときの衝撃は忘れられない。アメリカのワシントンDCのナショナル・ギャラリーでだった。Number 1, 1950 (Lavender Mist)という作品で、部屋に入ったとたんにその絵から猛烈なエネルギーがこちらに押し寄せてくる気がした。

私はこの美術館でアメリカ発のモダンアートに初めてであった。デュシャン、モンドリアン、デ・クーニング、ラウシェンバーグ、ジョーンズ、リキテンシュタイン、ウォーホル、ステラなどである。彼らの作品どれもが衝撃的だった。中でもポロックにはまさに筆舌に尽くしがたいほど感動した。というわけで、2週間の滞在中、毎日ナショナル・ギャラリーに通った。ギャラリー・ツアー(毎日3、4回あって、これがなかなか良いのです)にはできるだけ参加した。それまで絵画にはさほど関心がなかったのに、生まれて初めて、絵が面白いと思った。ヨーロッパの古典的絵画もこの美術館は多く所蔵、展示もしていたけれど、私が通ったのはモダンアートの展示してある東棟(East Wing)だった。

ポロックが他のモダンアートの画家たちと違っていたのはその野性味だった。もちろんソフィスティケイトされているのだけれど、どこか得体の知れない奔放さがあって、それがキャンバスの枠をはみ出しこちらに迫ってくる。だから見る側は自ずと絵の世界と一体化してしまう、そういう経験をした。ポロック作品の展示してある部屋で、彼の作品に1時間以上向かい合うなんていう贅沢な経験をさせてもらった。

そのあと、ニューヨークのMoMAでもポロックの部屋では長く過ごした。彼の絵にはみるものを奮い立たせずにはおかない何かがある。決して「楽しみながら」見る作品ではない。そんなことをしたらポロックに失礼な気がする、そういう作品である。特に彼の不遇と悲劇的な死を思うと、そんな気がしてしまう。

この番組に登場した石井竜也さん、あの「米米CLUB」の石井さんだとは!もともと美術専攻だったということで、同じ「画家」としてのコメントは説得力があった。それだけではなく、今までのゲストと違ってポロックと共振しているアーティストとしての解説だった。彼の鋭い感性がポロックの絵の雰囲気と一体化しているという感があった。千住さんも彼に共感し、彼の感動を引き立たせようとされているのがよく分かった。同じ音楽に携わるアーティストとしての共感だったのかもしれない。そういう磁場がそこに現出したのを目撃した。ぴったりの人選だった。

ポロックをみたくなった。愛知県美術館で1月22日まで「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」を開催しているという。関西には来ないようなので、名古屋まで出向くしかないかもしれない。

ちなみに、ナショナル・ギャラリーのNumber 1 は以下である。美術館サイトからのものである。下にそれに付随した美術館の解説を付した。

"Jackson Pollock, Number 1, 1950 (Lavender Mist),1950, National Gallery of Art, Ailsa Mellon Bruce Fund, 1976.37.1 (Click image or hotlink below to enlarge - 446 k)

"It is impossible to make a forgery of Jackson Pollock's work," Time magazine critic Robert Hughes claimed in 1982. It is a telling comment that gets to the heart of Pollock's authenticity as an artist." Lavender Mist about sums up his most ravishing, atmospheric painting....Pollock used the patterns caused by the separation and marbling of one enamel wet in another, the tiny black striations in the dusty pink, to produce an infinity of tones."