勤務先で会議が長引いたため、ミニショーは見損ね、その上お芝居も最初の10分程度遅れてしまいました。
このお芝居は他劇団(九州系)でも観たことがあります。ただし、完全に若丸バージョンに替えられていました!以前にみたお芝居とは重点の置き方がまったく違っていて、面白かった。これぞ若丸さんの面目躍如といった趣がありました。
妻と乳飲み子連れで旅をしていた盲目の侍(星矢さん)は、行き倒れたところを土地のヤクザ一家に助けられる。ところが逗留するうちに侍の妻(はるかさん)はヤクザの親分(剛さん)とねんごろになってしまう。そこで邪魔になったのが盲目の亭主と子供、親分にその始末を頼む。親分は一家の遊び人、源太(若丸座長)にそれを依頼、妹の病の治療費が入り用だった源太は、仕方なくその「仕事」を引き受ける。そして親分から大枚16両をその駄賃としてせしめる。ここでの若丸さんと剛さんの「押したり引いたりの駆け引き」の問答が笑えました。
当の侍は赤子を抱いて村はずれの地蔵に「目が開くように」と願かけに来ていた。そこやってきた源太。侍に、その妻と親分とに頼まれて彼を襲う羽目になったと打ち明け、刀を振り上げる。ところが、赤子が彼をみて笑いかけるので、振り上げた刀を降ろすことができない。侍が潔く斬られようとしている姿も彼の心を打つ。結局侍を殺すことができなかった。源太は侍に二人で親分に仕返しをしようと持ちかける。そして彼の目の治療費として親分からせしめた16両を手渡す。
一方親分一家では源太があれっきり2週間も帰ってこず、また音沙汰がないのに業を煮やしている。親分は源太が本当に侍を殺したのかを疑い始めている。そこへ帰ってきた源太。長い不在の理由をあれこれと述べ立てる。ここのところがいちばん若丸版と思わされたところです。手を替え品を替えて、弁解したりからかったりしてみせます。それに使われたのが田村正和、小林旭、坂東英二のものまねでした。これすべてアドリブだったのでしょう。若丸さんの「奮闘」に剛さん、手下役の座員さんたち、笑いをこらえるのに必死でした。なんという大盤振る舞い!客席も多いに盛り上がっていました。以前みたものとのいちばんの違いがここでした。芝居の重点、クライマックスはこの場に置かれていました。
目が開いた侍がこの場に登場。源太ともども親分とその手下たちを殺すところで幕。
若丸さんにかかれば、古いタイプのお芝居が「松竹新喜劇」風に換骨奪胎される良い例です。この方がたしかに面白い。とくに私のような関西人にはやっぱりこういうオチの付け方が重くなくて気が楽です。もう一つ感心したのが、若丸さんの殺陣でした。実にきれいでした。さすがです。瑕疵がまったくない!