yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

タングルウッド音楽祭

ちょうど今頃アメリカはマサチューセッツ州バークシャー郡レノックスにあるタングルウッドでは音楽祭の真っ最中である。ボストンフィルは夏の間その活動拠点をボストンからここに移し、毎晩のようにここでコンサートが開かれる。それこそ現代のクラッシック音楽界を代表するキラ星のことくのプレイヤーたちがこの田舎に集結するのだ。

あの小沢征爾がボストンフィルの音楽監督だったときにも、夏はこちらでボストンフィルを指揮していた。彼が去ったあとも彼の名は Seiji Ozawa Hall となって残っている。

ちなみにこの8月のスケジュールをみると、8月14日はチェロのヨーヨー・マYo-Yo Ma)の演奏会となっている。チケットは20ドルから99ドルまでである。これはあくまでもホールの中(Seiji Ozawa Hall)の席での話で、ホールの外の芝生の上はたしか5ドル程度の格安料金だった(と記憶している)。

ホールは建物というより開放空間で、間口は芝生の広場にむけて全面開放されているのだ。だから人々は芝生の上に敷物をひき、グループによってはワインやらスナックを持ち込んで鑑賞するのである。満点の星の下で!かなり冷えるので毛布やらコートやらの防寒グッズは必需品である。

あーっ、聴きたい、みたい!日本からもツアーを組んでやってくる音楽好きがいたっけ。もちろんアメリカ人にしても、ニューヨークやボストンからツアーを組んでくる人もけっこういる。たいていの人は車で何時間もかけてやってくる。だから駐車場は満杯で下手をすると入れなかったりする。

1年間研究員でロードアイランド州プロビデンスにあるブラウン大学にいたとき、ブラウンの哲学科の博士課程にいた日本人のI君にこの音楽祭に誘われた。彼は運転ができないので免許取ってまだ7ヶ月だった(プロビデンスで取得した)私に運転してくれというのだ。なんのことはない人を運転手として使うつもりだった。アキレス腱をきってしまって松葉杖だったのに同情して、ときどき買い物に連れて行ってあげたりしていたので、その延長である。ボストンフィルには冬のシーズン中にはよく行っていたので、タングルウッドもいいかもと思って乗ったのが運のつきだった。

夜8時からのコンサート(もちろん芝生席)を聴くのに昼の1時過ぎにプロビデンスを出た。途中高速ばかりで、その上ボストンに行くのにいつものI-95を使わず、有料高速道を使ったので勝手が違いかなり参った。目的地が近くなったので一般道に降りてからがもっと大変で、迷いまくった。ガソリンスタンド等で行く道を聞きつつ行ったのだが、各々が違ったように理解していて、これでけんか。到着したのもぎりぎりに近く、駐車場探しでまたもや右往左往。コンサートが始まる頃にはすっかり疲れ果てていた。

コンサートが誰の指揮だったのかは、覚えていない。オケは当然ボストンフィル。でもそれまでのクラッシックの音楽会とはまったく違う世界をみた気がした。芝生に座っている人たちが心から楽しんでいるのが伝わってきた。ワインも入って陽気になってはいても、騒いだりはしない。しみじみと聞き惚れている。互いに繋がっているそういうキンシップを強烈に感じた。周りの観客とそういう感触をシェアできたのは、クラッシックのコンサートでは初めてだったし、それ以降もない。

10時過ぎに終了。それから帰るのもまた大変だった。でも帰りはI-95に乗ったので幾分リラックスできた。すいていたので時速80マイル以上出していたら、またもや文句をいわれた。「死ぬ思いをした」と自分の友人にいっていたそうな。日付も変わり午前2時ごろにプロビデンスに帰り着いた。

そういえばI君、今どうしているのだろう。学部は東大の仏文、修士は東大の哲学という超優秀な人だったけど、結局ブラウンでは博士号を取得しないまま中退したのだと思う。私がペンシルバニア大に入ってから2回フィラデルフィアを訪ねてきてくれたけれど、それもずいぶん前の話だから。そのときはすでにプロビデンス郊外の大学で非常勤で哲学を教えていた。

2007年に学会でプリンストン大学に行ったおり、彼のブラウン時代のガールフレンドだったアメリカ人の女の子に偶然出くわした。彼女は結婚してサンフランシスコ市美術館のキュレーターになっていた。I君の消息を知らないかと聞いたけれど、彼女もつきあいが途絶えているようだった。

今ネット検索をかけたところ、日本のサイトにこの音楽祭の様子を伝える写真が載ったブログを見つけた。ありがとうございます。まさにこのとおりです。懐かしい!!!今年は8月30日からフィラデルフィアだけれど、音楽祭終了は28日なので、行くとしたら来年になる。