yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『波止場の狼』劇団花吹雪@新開地劇場 7月6日 桜春之丞誕生日公演

お芝居は『波止場の狼』で、現代劇でした。といっても時代設定が今ひとつはっきりはしなかったのですが、平成ではなく昭和の雰囲気でした。他の劇団で以前に観たものとよく似ていました。ヤクザ一家、波止場組の二代目を継ぐことになっている男、秀(春之丞さん)の生みの母との再会と別れを描いた「母もの」でした。

一家から足抜けをしようとしてた若い組員(恵介さん)とその姉(かおりさん)を一家の二代目、秀が他の組員たち(愛之介さん、松ノ介さん)と追跡している。二人は居酒屋に逃げこむ。そこの女将(三河家諒さん)は逃げた組員とその姉をかくまうことになり、秀と渡り合って一歩も引かない。秀は女将に頬をはられる。しかし、不思議と怒らない。しかし、彼の思いをよそに怒った一家の者がその居酒屋に押し掛け、乱暴狼藉を働く。ちょっと間抜けで足らない組員を真之輔さんが演じられました。例の十八番のハゲのパンチパーマ鬘に赤い腹巻きというなんともオカシイ格好で。組員の狼藉を知った秀は女将に謝罪する。

匿われていた組員の姉が警察に密告したので、警察が一家の手入れに入る。怒った秀は二人を捕え倉庫に監禁する。それを聞いた女将が倉庫に駆けつける。秀が銃をだして彼らを撃とうとしたそのとき、一人の年配の男(寿美さん)が割って入る。彼は秀に女将こそが彼の母であると明かす。赤ん坊のときに初代組長に勾引されたのだという。女将は秀に向かって「なぜ銃なんかもっているの」と責める。そして泣きながらその場を去って行く。初代組長(京之介さん)が出てきて、その顛末をせせら笑う。そして秀を撃つ。秀も組長を撃つ。

みんなが去った倉庫。撃たれた秀が座ってたばこに火をつける。が、やがて前に倒れ込む。

ここまでだとなにか不完全燃焼のようなイライラが募ったのですが、さすが花吹雪!と思わされたのが、次のショーの冒頭のコント、『波止場の狼』でした。これはさきほどの悲劇のパロディ版になっていました。春之丞さんが演じた「カッコいい」秀を今度は真之輔さんが、女将を愛之介さんが演じたのですが、実は愛之介さんが女装趣味の「お父さん」だったというオチで終わるのです。このバカバカしいオチを見せるためにあの「悲劇」を演出したのではないかと思うほど、こちらの方がツボでした。こういう「バカバカしさ」を演じて、花吹雪の右にでる劇団はありません。そしてそれが観客にこれほど支持される所以だろうと思います。もちろん私も大好きです。このセンスで長谷川伸の『瞼の母』なども喜劇バージョンにしていただけないでしょうか。いまどき昔ながらの『瞼の母』を好む客は多くはないのでは。パロディの方が受けること間違いなしです。若い観客層にはもちろんでしょうが、年配の人たちもフルーイ「母もの」が大好きという人は多くないように思います。

もう一つの極めつけ、「これぞ花吹雪!」というのは円広志の『夢想花』をバックにしての 男性陣総出のショーでした。 「飛んで飛んで飛んで飛んで、回って回って回って」というあの「有名な」歌詞にあわせて、全員が髪の毛がバネで土台に付けてあるオモシロ鬘で飛び上がり踊り狂うのです。飛び上がるたびに髪の毛が土台からピョンピョン跳ね上がります。なんともケッサク!お腹を抱えて笑い転げました。笑い過ぎで死にそうでした。どこの劇団がこんなばかばかしいことを考えつきます?さすが花吹雪!イケメン軍団があの鬘の髪をピョンピョンさせるなんていう「恥ずかしいサマ」を惜しげもなく曝してしてくれました。満腹。

ここまでいろいろな演出を考えられるのは大変だったに違いありません。それでも舞台の春之丞さんはそんな疲れなど露ほども見せず、さわやかに (serene) 踊っておられました。