yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

竹本錣太夫襲名と『傾城反魂香』in「初春文楽公演」@国立文楽劇場1月21日昼の部

津駒太夫さんが錣太夫を襲名された。とても慶ばしいこと。錣太夫の名跡襲名はなんと80年ぶりとのこと。津駒太夫さんの語りは独特で、他の方々のそれとかなり異なった印象だった。「これぞ大坂!」という感じの語りだとひとり納得していた。聞いたことはないのだけれど、おそらく故津大夫さんに似ておられるのかとも、想像していた。どういったらいいのか、泥臭いというか、浪曲っぽいというか、野太い声に乗せて深く重く、そしてうねりながら情を表現する語りである。初めは乗れなくても、聴いているうちにそのうねる語りに同化して、泣いたり、笑ったりしてしまう。最近、とくに語りに味わいが深まって、いよいよ名跡を継がれるのかもしれないと期待していた。それが叶って、本当にうれしい。

『傾城反魂香』の「土佐将監閑居の段」で、奥を語られた。歌舞伎でもこの段のみ演じられることが多い。錣太夫・宗助の組み合わせ。人形は又平を勘十郎、おとくを清十郎、修理之介を玉勢、将監を玉也、その奥方を文昇だった。

錣さんの野太い声が又平の吃音を、ちょっと大仰なほどにみごとに糸に乗せていた。悲壮さがあるはずなのに、どこかおかしい。また、おとくの饒舌も軽いようでいて、その中に悲しさ味が按配されていて、みごとな語りだった。使い分けが素晴らしい。

悲劇でいるようで、結局は「めでたしめでたし」で終わるこの狂言を、錣さんの襲名の語りに選んだということにも、何か意味があるのかしらんって、思ってしまった。津駒さんは年長の太夫さん。若手が次々と襲名していくなかで、古参だった彼の襲名はなかなか来なかった。だから「やっと!」だし、「報われてめでたし!」でもあった。しかもそれが「永久欠番」なんていわれていた「錣太夫」なんですから。

襲名の挨拶は彼と同年輩の呂太夫さんがされた。いかにも錣さんらしい面白い楽屋噺も披露してくださった。

先日の夜の部は客席に空きが目立っていたけれど、この昼公演は賑やかで、ほっとした。やはり「襲名興行」独特の華やぎがあるのが、うれしかた。

以下にこの文楽公演チラシの表をアップしておく。

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