yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

終幕に唐突感があった『江戸育お祭佐七(えどそだちおまつりさしち)』@歌舞伎座10月21日昼の部

江戸前の明るさと洒脱を期待したら、結構陰惨な場面があり驚いた。以下に歌舞伎美人」サイトから拝借した演者一覧、それにみどころをアップしておく。

お祭佐七       菊五郎

芸者小糸       時蔵
倉田伴平       團蔵
鳶の者すだれの芳松  権十郎
同    巴の三吉  坂東亀蔵

鳶重太        萬太郎
同柳吉        巳之助
同長蔵        種之助
同辰吉        廣松
同仙太        市村 光
娘お種        尾上右近
踊りの勘平      寺嶋眞秀
同  お軽      亀三郎
同  伴内      橘太郎
小糸養母おてつ    橘三郎
箱廻し九介      片岡亀蔵
遊人おででこ伝次   市蔵
矢場女お仲      齊入
吉野屋富次郎     萬次郎
祭りの世話役太兵衛  楽善
鳶頭勘右衛門     左團次

 <みどころ>

鳶と芸者、もつれる恋の行く末は…

 賑わいを見せる鎌倉河岸の祭礼で、「お祭佐七」の異名をとる鳶の佐七と芸者の小糸は、束の間の逢瀬を楽しんでいます。佐七は、小糸に力づくで迫る侍の倉田伴平から小糸を助け出し、二人は夫婦同然の生活を始めます。しかし、鳶の頭である勘右衛門が小糸を連れ戻しにやって来て…。
 神田祭の祭礼を背景に、いなせな鳶と小粋な芸者が織りなす恋模様。江戸の情緒漂う世話狂言の名作をご堪能ください。

ちょっとした行きちがい、誤解で、思い合う二人を悲劇が見舞うというのが大雑把な概略だけれど、いささか違和感が。「柳原土手仕返しの場」での佐七による小糸殺しは、未だに納得が行かない。南北、黙阿弥にも似たような設定の悲劇はあるけれど、それらは「なぜ殺してしまうのか」のリーズニングがしっかりしている。それがこの舞台ではストンとは来なかった。なぜか?

「小糸の父の仇が他ならぬ佐七である」という伴平の作り話に、小糸、そして佐七が簡単に騙されるのが納得できない。さらには佐七ともあろう男が、「小糸の裏切り」という伴平の嘘に、あまりにも簡単に嵌ってしまうのが納得できない。江戸前粋を象徴する人物である佐七像とはあまりにもかけはなれている。原作は河竹新七だけれど、ひょっとしたらこの歌舞伎版ではリーズニングの手を抜いた。新七の仕業ではなく、今のスタッフの問題?とにかく鼻白んだ。脚本・演出をもう少し理の通ったものにするべきでは?「えっ、これで終わり?」と消化不良のまま舞台が終わった。

それでも役者に不足はなかった。菊五郎はもちろんのこと、相手の時蔵もこれ以上ないカップル。特に時蔵の色っぽさにはドキドキした。

不満をいえば、尾上右近と巳之助の出番があまりなかったこと。それにひきかえ、劇中舞踊の「道行旅路の花婿」で、勘平役の眞秀君にスポットライトが当たりすぎだったこと。可愛かったんですけどね。お軽役の亀三郎君の方が数倍上手かった印象ですが。まあ、お客さんたちは「カワイイ!」って連呼していたので、私がとやかくいうことでもないのですが。菊五郎祖父さんの顔を立てたということでしょうか。