yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

能・狂言・文楽の披露が目玉だった?「即位礼正殿の儀にともない来日した外国元首・祝賀使節らをもてなす首相夫妻主催の晩餐会」@ホテルニューオータニ東京10 月23日

ちょうど東京滞在中だったので、ホテルでニュースでは見たのだけれど、別にきちんと全編見るつもりはなかった(当方、海老蔵と聞いただけで虫酸が走るので)。昨日、羽生結弦さんの「スケート・カナダ」でのEXの演技、「パリの散歩道」をyoutubeで検索中、引っかかってきた。

宴会の前半部は飛ばして途中の野村萬斎さん、吉田玉男さん、そして海老蔵の「共演」あたりから、半能「石橋」の最後までみた。なかなか興味深かった。

この晩餐会のyoutube 映像は長〜い動画。映像での萬斎さんの解説があり [1:25:31頃]、そのあと狂言・歌舞伎・文楽のコラボ、「三番叟」が。能は [1:49:37] あたりから。映像をリンクしておく

もちろんお膳立てというか、こういうプログラムを考案した人がいたのだろう。かなりの「苦肉の策」だと思う。人寄せパンダ役をやらされた萬斎さんがお気の毒だった。オリンピック芸術監督に任ぜられたこともあり、断れなかったのだろう。とはいえ、ひょっとしたら「考案者」は萬斎さん?

「海老蔵を入れる」というのは、どこかの政治家からの圧力?単に名前が知られているだけで、その名前に実が伴っていない歌舞伎役者の典型。だいたいが、この10月、歌舞伎は真っ盛り。国立劇場、歌舞伎座、新橋演舞場と東京だけでも三ヶ所で公演中。もちろん役者は取り合いで、普通ならこういう場に出られないはず。海老蔵は「干されている」からこんな場に出てくるのが可能だった?

この動画についているコメントがおかしい。曰く、「野村萬斎さんや海老蔵を選んだのは、芸能人として芸能界で活躍したからでしょうか?」。そう、彼らは演技者ではなく芸能人扱いなんですね。納得。

もちろん選曲は、「即位礼正殿の儀」を祝い寿ぐという意味で、『翁』以外考えられない。各地の神社、お正月は『翁』の奉納で始まるんですから。それを狂言部「三番叟(三番三)」を抜き取り、歌舞伎の三番叟とすり合わせ、そこにさらに文楽の三番叟を入れ込むという、涙ぐましい構成だった。これ、かなり無理があったような。

流れは以下のようになっている。まず映像での萬斎さんの解説。これ予想以上に良かった。英語の解説もわかりやすいものだった。ご自分のCMを付けているのが、ご愛嬌。 

解説に続いていよいよ実際の舞台へ。能『翁』の三番三の舞を萬斎さんが舞ってみせる。海老蔵が舞台に登場し、萬斎さんと並び、踊る 二人の連れ舞い。あれあれ、二人の後ろに織太夫さんの姿も。カメラはなぜか海老蔵ばかりを映している。直面の萬斎さんと並ぶと海老蔵の化粧顔がまるで爬虫類に見える。派手な動きなのでアラがさほど見えずに済んでいる。しかし、きょときょとと落ち着きがなく、三番叟の品格が現れていない。一方の萬斎さんはそれに親切にも合わしておられる。海老蔵という人は「息」がなんたるか、まったく解っていない?

狂言・歌舞伎の主だったお囃子方は以下の方々。

笛   武市 学

大鼓  亀井広忠

小鼓  田中傳左衞門

小鼓  田中傳次郎

文楽の演者は以下の方々。

語り     竹本織太夫

人形遣い   吉田玉男

三味線    竹澤宗助

それまで後ろに控えておられた人形遣いの玉男師匠が、やっと三番叟に参加される。太夫は織太夫、三味線宗助さん。

そして、クライマックス部。黒式尉面をつけた萬斎さんが鈴を持って五穀豊穣を祈る「鈴の段」が始まる。海老蔵も鈴を持って、玉男さんも人形に鈴をもたせて三人の連れ舞い。萬斎さんは相方をカバーしようとしてか、いつもの勢いが薄い。海老蔵は一人だけ目立とうとしているよう(まあ、歌舞伎はそういう大衆的要素があるわけで)。玉男さんの使う人形が一番三番叟らしくひょうきんで楽しませる。ここから三味線が入る。最後に三人が舞台でお辞儀をして終わる。

ここから半能「石橋」。普通『翁』の後は脇能(神能)が来るのだけれど、なぜか「石橋」。外国人来賓に「わかりやすい」演目を選んだ?私個人としては、「高砂」がよかったんですが。観世清和師の舞囃子「高砂」(youtubeで見ることができます)が素敵なので。

舞台の左右に赤と白の牡丹が据えらえている。こういうヴイジュアル演出は、歌舞伎との強い類似が見られるところ。クライマックス部は [1:57:52] あたりで、演者ほぼ全員が舞台に並んでいるのを見ることができる。以下に演者一覧を。地謡方は東京の方ばかりなので、残念ながら、お名前がわからない。

シテ(白頭)    観世清和

シテツレ(赤頭)  観世三郎太

ワキ        殿田謙吉

 

笛    杉市和

小鼓   大倉源次郎

大鼓   亀井忠雄

太鼓   小寺佐七 

 

後見   観世銕之丞 片山九郎右衛門 観世喜正

 

能らしからぬ演目を選んだのだのは動きが派手で、初めて能を見る人にもわかりやすいからかもしれない。また、橋掛りをさぁーっと登場するところのシテ、シテツレの勢いには息を呑んでしまう。清和師、三郎太さんの連れ舞いは息が合っていて、楽しめた。

 

そういえば、2018年6月に九郎右衛門師もご子息の清愛さんと『石橋』(こちらはフルの能)をされていて、記事にしている。

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