yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

次のステージへ!羽生結弦選手の「「Crystal Memories」in 「ファンタジー・オン・アイス2019 富山」

 

自然な流れ

幕張の時と比べると所作のつなぎが流線を形成している、つまりより一層流れるようになっている。この流線のせいで、完成している(accomplished)という印象はない。まだまだ続きがあると、思わせられる。

しかも、その流れに乗った演技の一つ一つが、技巧としてではなく「自然」に見える。「羽生結弦」という表現者が自然体でそこに居る感じが高まっている。この自然体で、スケート場という舞台全体を支配するさまが、実に確信犯的。そこに羽生結弦という人がスケーターとしてだけでなく、人として成長した証を読み取れる。

反芻される記憶

「Crystal Memories」というタイトルの意味が立ち上がる。上身のオーガンジーの衣装に施されたクリスタルの粒。彼の今までのスケーティングの集積の一つ一つが、光を浴びてキラキラと輝くクリスタルの粒となって彼に纏いついている。羽生結弦という表現者が、一つの発光体のように光を発しながら滑っている。

見惚れているうち、自分が見てきた「羽生結弦」の演技の記憶の数々(ヒストリー)が甦ってくる。それらを再び自身に差し戻すことで、記憶が内在化する。記憶の反芻、その繰り返しのうちに、至福のときを過ごしている自分がいる。

クリスタルが表象する記憶の集積

彼が表現してきた(達成してきた)スケーティングの技が、衣装につけられたクリスタルの一粒一粒。その衣装を纏って披露されるのは、彼自身が体験してきたスケート選手としての、そして表現者=アーティストとしてのいくつかの記憶の段階(ステージ)。あくまでも想像だけれど、以下のような段階が提示されているように感じた。

限りなく上のステージへ

最初のステージでは、スケートを始めた頃のワクワク感と純な喜びを表現。無心にスケートと戯れていた頃の記憶(memories)。冒頭では腕を目の前で重ね合わせ、それを開く動作。それはまさに目の前の暗がりから目を開けてスケートにイニシエイトされるその瞬間を表わしている。未知の世界を見る所作。

そこから、両腕を外へと大きく広げて行く。スケートを始めた頃の無条件の喜びを表現。腕の振りが、目前に開けた世界に幼児のように問いかけているさまを示している。ここに「白鳥」の姿が重なる。

そして、右腕を前に出し、手のひらを向こうに向けて、押し出す動きは新しい扉を開ける様を表わしている?そこから、両腕を広げた振りに腰の左右のひねりがつくのだけれど、まさに白鳥の純真さ、美しさ、しなやかさそのものである。

ここで、変調。あたらしいステージが示される。研鑽を通じてより成熟したステージを目指す姿がしのばれる。他者の期待に応えるべく、技を磨き、優雅なスケーティングを完成させつつあった頃の羽生結弦さん。一つ一つの動作のもつエネルーギー度が高まり、スケーティングに一層の加速度がつく。

ジャンプの後、勁さが増し、次のステージへと。ここではより高みへと飛び跳ねる。それは天を希求すると同時に地にも繋がる「SEIMEI」の頃の舞台を表現している?技巧的には、スピン、イナバウアーがより効果的に採り入れられている。

 解放と上昇—より過激に、より奔放に!

ジャンプに続くかなりドラマチックなバンという音が引き金になり、次ステージへと。それは今までの「総括」であるとともに、さらなるステージアップへの志向を約束するもの表現により深みと襞が増す。演技の自由度はより高まっている。でもこれが最終のものではない。なぜなら、これは以前のステージからの解放を表しているだけだから。

歌い手のToshIさんと対峙した(これは幕張にはなかった)後、さらなる意思表示が。彼が自由に表現したいステージへと。どこまでも自由に、過激に、奔放に!滑ることの喜びを全身で表現しきっている羽生結弦さん。最後は美しいシットスピンからスタンドスピンで閉じる。

富山ヴァージョン

この富山ヴァージョンは、確かに幕張のものとは違っていた。より強い意思表示となっていたし、また「羽生結弦」がどこへ向かおうとしているのかが、かなり具体的に示されていたように思う。「羽生結弦」というスケーターが他のどのスケーターとも次元がまるで違っているのは、芸術としてのフィギュアスケートを志向する意思が明瞭に示されているところ。「美しい少年の美しい演技」(時分の花)を超えて、何か人間的な、内在する苦悩のようなものを表現しようとしているように感じた。「以前のままでいて欲しい」というこちらの勝手な思い。それに抗する「いや、その成長をeye-witnessできるのは喜ばしい」という思い。その間で、我ながら戸惑っている。

録画ではなくYoutubeのものを使わせていただきました

この記事はYoutubeにアップされていたものを見て書きました。

konnmaさんの情報で、「BSフジ」27日の録画を滞りなく済ませていたのですが、29 日に他の録画を消去しようとして、誤ってその録画を消去。落ち込みました。Youtubeに当たったら、幸いなことに何本かアップされていましたので、利用させていただきました。