yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

勘九郎の愛嬌全開『大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)』 in 「芸術祭十月大歌舞伎 十八世中村勘三郎追善」@歌舞伎座 10月25日

この10月公演、昼夜みた中で、これがもっとも楽しめた。ひとえに勘九郎の酒呑童子が素敵だったから。素敵としか形容できない。色気があって、めちゃくちゃ可愛く、そして怖くもおかしいこの酒呑童子を見事に描いて(踊りきって)いた。

以下に配役とみどころを。

作   萩原雪夫

振付  二世  藤間勘祖

作曲  十四世 杵屋六左衛門

 

<配役>

酒呑童子
平井保昌
渡辺綱
酒田公時
濯ぎ女なでしこ
濯ぎ女わらび
濯ぎ女若狭
源頼光

勘九郎
錦之助
歌昇
隼人
児太郎
種之助
高麗蔵 
扇雀

 

<みどころ>

酒呑童子退治の伝説が題材の舞踊劇

 大江山の鬼神酒呑童子を退治するよう命じられた源頼光らは、山伏姿となって大江山へと向かいます。そこに現れた酒呑童子に、熊野権現から賜った神酒をすすめると、童子はこれを呑んで舞い踊り、ついには酔い潰れてしまいます。
 ここへ童子にさらわれた濯ぎ女たちがやって来て、大江山での辛い様子を語ります。やがて童子は鬼神の本性を顕し…。
 十七世中村勘三郎のために書き下された、中村屋ゆかりの舞踊劇を上演いたします。

いわゆる「鬼物」の切能「大江山」(五番目物)を基にして、それを松羽目物に仕立てている。昭和38年6月に歌舞伎座で初演、十七世勘三郎が酒呑童子を演じた。十八世勘三郎がそれを継いで演じてきたのを、今度は孫の勘九郎が演じる。

私は10年前に歌舞伎座で十八世のものを見ている。そして去年はロームシアターでの顔見世で勘九郎のものも見ている。勘九郎は昨年よりずっと「大きく」なった感があった。これほど似るものかと思うほど、姿形だけでなく、声も、所作も故勘三郎を彷彿させた。昨年より愛嬌が増していて、溢れんばかりだった。見ていて、思わず笑いがこぼれてしまった。

若手の歌昇、隼人も良かったけれど、児太郎、種之助、高麗蔵 らの女方陣がとくに良かった。種之助の女方は最初誰かとわからないほど板に付いていて、しかも元気が良かった。児太郎はちょっと遠慮気味。推察するに、児太郎はかなり控えめな性格で、他の役者と並べられたとき、引いてしまう傾向があるように感じた。独りだと、思いっきり弾けるのにと、残念。とはいうものの、贔屓目でなく児太郎の踊りが抜きん出ていたのは確か。技が確かなんだから、もっと前に出て欲しい。

こういう松羽目物の楽しみは、なんといってもお囃子。笛、小鼓、大鼓、そして太鼓は能とまったく同じ楽器で演奏される。しかも小鼓方は四人で、小鼓頭が田中傳左衛門なので、迫力満点なのは保証済み。演者の踊りを引き立て、さらに煽る演奏だった。心踊り、心はやる舞台に仕上がっていた。能の『大江山』も楽しい作品だけれど、歌舞伎版は最初から最後までワクワクする舞台になっていた。