yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「イーヴォ・ポゴレリッチ in 奈良」−—静謐と美と−—NHK BS 9月14日

早朝、たまたまつけたBS、その画面と音色に釘付けになった。5時からの放映だったらしく、私が聴いたのはショパンの「ポロネーズ」の途中から。「ポロネーズ」は好きな曲で何枚かCDを持っている。私の中での最高峰はポリーニなのだけれど。しかし、今目の前で聴いている演奏はどのピアニストとも違ったものだった。歯切れがいい綺麗な音というのではなく、どちらかというとゆるく、少々重い感じ。それが演奏の場である寺院内部、庭としっくりと合っていた。演奏者の寺院への敬虔な念が、音の合間、合間に響いていた。ショパンと日本の寺院とが不思議な調和を魅せていることが衝撃だった。それに演奏者の大きな、いかつい手!体躯もそれに見合って「剛」という感じ。しかもどこか僧侶を思わせる雰囲気。しかし醸し出される音は繊細そのもの。今までにお目にかかったことのない演奏者。「ポロネーズ」が終わり、次の「ノクターン」に入ったところで画面に演奏者の名が。

そこで初めて彼があの「イーヴォ・ポゴレリッチ」だと知った。破天荒なピアニストという評判は聞いたことがあったけれど、演奏を聴くのは初めて。確かに「破天荒」だった。武士でありながら出家、放浪した漂泊の歌人、西行の姿がかぶる。

この番組は「2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿での演奏をまとめたもの」で、すでに何度か再放送されていたようである。出逢えたのは本当に僥倖。「解説」に「苦難を乗り越えてきた音楽人生を語る」とあったのだけれど、私が聞いた部分には当該箇所のインタビューはなかった。公式サイトにあった演奏の解説と内容は以下だった。

ピアノ界の鬼才イーヴォ・ポゴレリチ、約30年ぶりとなる映像作品。奈良の古刹、正暦寺福寿院客殿で収録した貴重な記録である。苦難を乗り越えてきた音楽人生を語る。

 楽曲

「ピアノ・ソナタ Hob.XVI-37 から第2楽章」
ハイドン:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(4分53秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

「ソナチネ 作品36第4から第2楽章」
クレメンティ:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(1分57秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

「ポロネーズ 第4番 ハ短調 作品40第2」
ショパン:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(6分55秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

「ノクターン ホ長調 作品62第2」
ショパン:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(7分44秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

「楽興の時 作品16 から 第5番 変ニ長調」
ラフマニノフ:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(5分23秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

「悲しいワルツ」
シベリウス:作曲
(ピアノ)イーヴォ・ポゴレリチ
(8分17秒)
~2017年10月24、25日 正暦寺福寿院客殿(奈良県奈良市)で収録~

最後のシベリウスの「悲しいワルツ」は秀逸だった。思いがけず涙がこぼれた。彼の演奏とその周囲の景色がシンクロ、別宇宙を構成しているかのようだった。

Wiki で「イーヴォ・ポゴレリチ」を検索したら、「1980年、ポーランド、第10回ショパン国際ピアノコンクールの本選落選、審査員特別賞受賞。これまでのショパン解釈からは到底考えられない彼の演奏は奇抜すぎるとする他審査員に対し、審査員の一人マルタ・アルゲリッチが『彼こそ天才よ』といい、その場から立ち去り抗議。審査員を辞任する騒ぎとなった」との記述が。そうか、この人があの演奏者だったんだ!頻繁に来日していて、しかも12月のことが多いとあったので、これまた検索をかけたら、ありました。大阪のシンフォニー・ホールでのコンサートが。12月2日だったので、ぴあのサイトに入った。安い席は売り切れだったが、なんとか席は確保できた。ただ、あまり良い位置ではない。でも楽しみ。