yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

【能楽チャリティ公演 被災地復興 京都からの祈り】@ロームシアター京都 サウスホール 8月23日 第一部

二部になっていて、第一部は午前10時半、第二部は午後6時半開演予定だった。台風接近のため、第二部は午後3時開演に変更のアナウンスがあった。私が見たのは第一部のみ。

素晴らしい演者さんたち、それも全員がボランティア(と思われる)。京都観世の関係者の方々と思われる係員の方々も、きっとボランティア。また、協賛企業数社が舞台設営、チラシ等の費用を被られたのだと思う。チケットは1500円!チケット代はすべて被災地への義援金になる。さすが京都観世、そして京都という歴史ある都市。頭が下がる。「祈り」というのがこのチャリティ公演のコンセプト。まさに能にふさわしい。

最初に大江信行師による演目解説があった。これには英語の通訳がついた。またチラシも英語の解説が併記されていた。

最初の演目は『翁』。『翁』は2017 年1月3日に八坂神社の「初能奉納」で、そして同年の2月27 日の大阪天満宮での「梅祭り勧進能」で見たきりである。八坂のシテは金剛流家元の金剛永謹師が、三番三は茂山茂師が務められた。茂山茂さんの三番三がとても印象に残った。

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二回目の北野天満宮のものは観世流だったけれど、大倉源次郎師の小鼓が素晴らしかったことしか覚えていない。金剛と観世との『翁』がずいぶんちが

ていることが印象的だった。今回の演者は以下。

翁 片山九郎右衛門 

三番三 茂山千三郎 

千歳 橋本忠樹 

面箱 青木道善、分林道治 
 笛 杉市和 

小鼓 林吉兵衛、林大和、林大輝 

大鼓 河村大 

八坂公演の記事にすでにWikiからの引用を借りたけれど、『翁』の次第がどうなっているのか、再度お借りする。

面箱を先頭に、翁、千歳、三番叟、後見、地謡の諸役が橋掛りから登場、翁は舞台右奥に着座し祝歌を謡う。
 露払いとして千歳が舞い、翁は千歳が舞っている間に舞台上で前を向いたまま白色尉を付ける。千歳の舞が終わると、翁は立ち上がり祝言の謡と祝の舞を舞う。その後もとの位置に着座し面を外して退場する。
 翁が、千歳の舞と翁の舞の 2場面からなるのと同様、三番叟も揉ノ段と鈴ノ段からなっている。前半の揉ノ段は面を付けず、後半の鈴ノ段は黒色尉を付け鈴を持って舞う。舞が終わるともとの位置に戻り、面を外して退場する。

シテの片山九郎右衛門師、かなり緊張されているように感じた。この演目が他のものと違う「重さ」があることがわかった。普段目にする能とはまったく違った舞台に仕立てられている。『翁』がいかに「能」の歴史の中で特別な立ち位置を占めているかがわかる。能の由来をたどる時、もっとも重要なキーになっているのだ。

比較的「あっさり」とシテが退場したあと、主役を張るのが三番三。茂山千三郎師の三番三は見事だった。軽やかに舞台を縦横無尽に駆けめぐる。見ほれた。三番三のもう一人の担い手として、役割を果たされていた。黒い面を付け、鈴を持って舞われるさまは、高揚感をかき立てる。おそらく『翁』のキモはここにあるのだろう。もっといえば、発生当時の尻尾はここにあるのかもしれない。

脇を固める演者たちが、さすが京都観世!千歳の橋本忠樹師の舞もすばらしかった。なんとも気品があり、すっきり感があり、それでいて侮れない存在感。さすがです。

お囃子方もそれに対抗するだけの方々。 笛の杉市和師の力強い音色、小鼓の林吉兵衛師とご子息たち、林大和、林大輝両師の若々しい鼓、そして大鼓の河村大師のいつもながらの迫力ある大鼓。どれを取っても、唸ることしかできなかった 

そして今回、何よりもよかったのは、京都市長等の「お偉方」たちの「演説」がなかったこと。以前のローム・シアター公演で辟易したから。能なんてほとんど見たことのない(わからない)人に、前口上をさせるのは、興ざめ以外のなにものでもありません。