yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

能『隅田川』(DVD)2本をロンドン大学図書館で鑑賞

五十五世梅若六郎師(現梅若実師のお父上)と友枝昭世師のもの2本。朝に1本、昼から1本、合わせて3時間ほどの能鑑賞ができた。これで禁断症状は幾分か緩和される?

梅若六郎師のものは1977年に収録されていて、これは亡くなられる2年前。艶やかな中にちょっとreserveを感じた。このビデオは私も持っていて、一度見ているはず。五十五世を見るとき、あの絶頂期の『卒塔婆小町』と『松虫』を思い浮かべてしまう。生の舞台は見ていないけれど、録画でもその圧倒的な存在感は伝わる。『隅田川』は晩年の演技だったせいかもしれないけど、もっとシンプリファイしたもの、あえていうなら抽象化したものになっていた。余分を排除した演技。でも、私としては彼の本領はあの華やかな、しなやかな、贅沢な舞台にあるように思うので、ちょっと不満。前へ、前へとツンのめるばかりの勢いを、「出すとき・貯めるとき」の緩急の呼吸が絶妙な方だった。『隅田川』はその内容の性質上、派手な動きを制したものにしなくてはならないからかもしれないんですけれど。

もう一本の友枝昭世師のものは2007年収録。なんと喜多能楽堂ではなく、国立能楽堂公演の録画。これは持っていないので、ありがたかった。こちらはどこまでも写実的。喜多流はそういうのとは違っていると想像していたので、かなり意外だった。昭世師の演じた母には何度も泣いてしまった。極めてリアルな演じ方。彼の舞台は昨年一度見ているけれど(大槻能楽堂での『綾鼓』)、ここまで踏み込んだ演技をされる方だった?地謡も情緒にあふれたもので、これにも驚いた。どちらかというと式学だった頃の名残の「硬派」を予想していたので。

舞台はナマモノ。DVDではそのライブ感は伝わらないのも事実。でもそれをretrieve するのが不可能なんだから、できるだけ録画を遺しておいて欲しいと、切に思った。録画があれば、日本を遠く離れたロンドンでも「能」を見ることができるんです。日本だけでなく、日本外にも能の鑑賞者を増やしたいのであれば、「ビデオライブラリー」構築が必須条件だと感じた。NHKだけなんてケチなことをいわずに。

ロンドン大の SOASライブラリー、改めてそのgenerosityに感謝。今日はDVD10本を頼んだのだけれど、観ることができたのは2本。残りは一週間キープしておいてくれるので、その都度、カウンターで貸し出せる。待つ必要なし。SOASライブラリー、能関連ビデオはこれ以外にもコレクションを持っているので、二ヶ月間楽しもうって考えている。