yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

片山九郎右衛門師と清愛さんの豪壮・絢爛な獅子舞に感動『石橋 大獅子』in 「四世梅若実襲名披露京都公演」@京都観世会館 6月2日

後場は親子競演で、九郎右衛門師が後シテの「白」を、ご子息の清愛さん(「師」とすべきか「君」なのか迷う)が同じく後シテの「赤」を舞われた。前シテは大江又三郎師。

まず白獅子が囃子方総動員で奏じる「乱序」に乗って登場。そのあと太鼓が主導する小鼓、大鼓の演奏。そして再び激しい太鼓と鼓方の「出の乱序」になる。そこに赤獅子がダーッと走り入って登場。二頭の獅子が所狭しと舞い狂う。白獅子が大らかに悠然と舞うのに対し、赤獅子はくるくると小回りを効かせ、躍動的に、力いっぱいに舞う。この対比はまさに親獅子と子獅子のもの。父と子の連れ舞い。二頭の舞は微妙にずれながら、つまり子獅子が親獅子の後を追う形になっている。この微妙なズレが面白い。舞台前面に置かれた二つの台。左台には赤い牡丹が、右台には白い牡丹がさされている。歌舞伎の『鏡獅子』に出てくる台の赤と白の牡丹は、これに倣ったのだとわかった。

台にそれぞれの獅子が飛び乗るところから、囃子のテンポがより速く、強くなる。二頭の獅子を煽り立てる。親獅子の舞もここからぐっと激しいものになってゆく。子獅子がくるりと一回転すると、親獅子も負けじと回転する。台の上にドンと上がっては下りるを二頭が繰り返す。じっくりした舞というよりも若く荒々しいパワーに支配された舞。もちろん技はきちんと押さえられた上でのこの躍動感。

凄じいエネルギーの横溢する舞台。こちらの胸の鼓動も激しさを増す。それがあっという間に中断され、二頭は舞台を去ってゆく。舞台には静寂が。この動と静の対比も面白い。あとを引く面白さ。余韻を残しながら終わったので、満足感もひとしおだった。

片山清愛さんの舞台をみるのはこれが先月26日の「片山九郎右衛門後援会能」での仕舞「小鍛冶」に続いて二度目。「小鍛冶」の時にもキレの良い若々しい動きに感心したけれど、今回の赤獅子はそれ以上。しかもキレがいいだけでなく、品がよかった。さすがお父上の息子さんだなって思った。不安な感じがなかったのは、今年の1月に横浜能楽堂で同演目で親子競演をしておられるからかもしれない。思う存分暴れまわっておられたような。九郎右衛門師はこういう激しいものよりも女物を得意とされるように感じていたけれど、改めて全方位の方だと思い知った。

お囃子方も、笛、森田保美師、小鼓、成田達志師、大鼓、河村大師、そして!太鼓、前川光範師と若さ溢れる面々、しかも京都勢で、勢いがあった。楽しかった。

 

この日の演者一覧が以下。

前シテ     大江又三郎

後シテ(白)  片山九郎右衛門 

後シテ(赤)  片山清愛

ワキ      福王知登

アイ      茂山千五郎

 

笛 森田保美 

小鼓 成田達志 

大鼓 河村大 

太鼓 前川光範

地謡 山崎正道 古橋正邦 味方玄 分林道治
   田茂井廣道 山中が晶 味方團 河村浩太郎

 

後見 青木道喜 片山伸吾 大江信行

能の『石橋』、歌舞伎の『鏡獅子』だけでなく同タイトルの「石橋」をおもいださせた。何人もの役者さんで見ているけれど、團十郎とまだ新之助だった海老蔵の「石橋」が印象的だった。海老蔵はあの頃が一番輝いていたように思う。