yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

春之丞 、京之介両座長(劇団花吹雪)の前向きな挑戦が光る『浪速の伊達男』@浪速クラブ 5月23日夜の部

 

劇団花吹雪の挑戦

役柄での工夫

ここ数年の劇団花吹雪は新機軸を展開しているよう。昼夜でお芝居をかえるとか(普通は同じ芝居)、あるいは昼夜で役替えをするとか、抽選で役を決めるとか。ともすれば陳腐になりがちな大衆演劇芝居を目新しいものにしたいという春之丞座長の強い思いの表れでしょう。大衆演劇では演目は毎日日替わりで変わります。ほぼ1ヶ月間の間、毎日変わるわけで、この稽古だけでも大変なのに、普段演じていな役をやりおおせなくてはならないというのは、想像するだけで、こちらの胃も痛くなりそう。ほぼ同じルーティーンで組まれた芝居をなんとか目新しいものにする、硬直化したルーティーンに風穴を開けたいという工夫ですね。しかもコンスタントにこの試みを続けているようなのは高く評価したいです。

 

演目の工夫

加えて、新しい演目にも果敢に挑戦されています。歌舞伎の演目を採り入れた試みは、京之介座長の希望のようです。また、今月は天草四郎を扱った『魔界転生』を演るとか。以前に拙い脚本を書いたことがあるので、何か親近感がわきます。そういや、天草四郎はゲームにもなっているんですね。新しい機軸を打ち出してゆこうという京之介座長の気概に打たれます。まだ、二十代ですよ。春之丞座長は三十代、二人の若い座長が、従来の大衆演劇の縛りを打ち破ろうという試みをされています。

 

花吹雪の新しさ

最近は大衆演劇の観劇からは足が遠のいてしまっているのですが、今月は劇団花吹雪に4回通いました。行くたびに面白い発見があるので。とはいえ、行きたい劇団は限られてきました。劇団花吹雪、恋川純劇団、それとたつみ演劇BOXのみ。その中でも劇団花吹雪の芝居の刷新化の度合いはとても高い。もちろん稽古期間の長い歌舞伎の「完成度」に比べると、そりゃー勝てないでしょう。でもね、パトロンに松竹を持ち、そこに安住して自分からは新しいことに挑戦しそうにもない歌舞伎役者が多々いる中で、大衆演劇の低予算、あるいは劣環境でのこういう挑戦は尊いものに思えます。

 

芝居内容

さて、閑話休題。本題のお芝居です。『浪速の伊達男』は初見でした(たぶん)。おそらく素になる芝居があるのでしょう。それに「会津小鉄伝説」が加味されているのでは?「浪速」というのがタイトルの一部なので、舞台は大坂?とはいうものの良くわからなかった。大衆演劇定番の二つのヤクザ間抗争がバックにあります。

難波組の初代組長の福松は対立する葵組の親分、東蔵に暗殺された。親分を失い、弱体化してしまった難波組。二代目があとを継いだけれど、争いごとが嫌いな優男で、今や組自体が強い葵組に乗っ取られそうになっている。代貸の誠太はそれが歯がゆくて仕方ない。二代目の女房、おみさも同様である。

 

難波組に葵東蔵と子分がやってきて、難波の初代に五十両を貸していたので、返せと言う。もちろん嘘。持ってきた証文も偽物。しかし、二代目は東蔵に額を割られても(傷をつけるという意味です)、手向かいできない。東蔵は二トキ後(4時間後)までに金を返せと無理難題をふっかけ、帰って行く。悔しがるおみさ、短刀で喉をついて自害してしまう。ここは、あの会津小鉄の女房の悲劇のコピーですね。それを見ても復讐に行くとは言わない二代目。失望した誠太は縁切りだと言って、飛び出す。誠太役の京誉さん、東蔵役の寿美英二さんという座長二人のお父上たち、悲劇の暗さ中でのお笑い担当。若手も下手さとずっこけで笑いをとっている? 

 

ここに介入したのが旅姿の会津の小鉄(春之丞)。そういや、なぜ彼がここに立ち会ったのか、はっきりしていなかったような。ともあれ小鉄は軟弱な二代目を叱咤激励する。五十両を小鉄からもらった二代目は、名誉挽回すべく討ち入りに駆け出して行く。

 

場は変わって、茶店。茶店といえばおばあさんと相場が決まっているのが、大衆演劇。茶店の女主人の京之介さんがオババメイクで登場すると、笑いが起きる。なかなかの変身ぶりでした。で、この方、難波組二代目の実母らしい。ここでやっと人間関係が判明。二代目の女房、おみさが初代の娘、二代目はそこに養子に入ったのだということが。こういう風に定番悲劇を換骨奪胎してしまった芝居が、花吹雪では常態になっている?ゲームを見ている感じ、また、観客も参加させらる感があるので、こういうの好きです。ベタな感情移入はなく、そのため「ヤマアゲ」もありません。

 

気のいい、でもどこまでも「軽い」オババ。メイクのみならずその言動で笑いをとります。そこに例の小鉄がやってくる。会津の小鉄部屋は京都にあったらしいので、舞台はやはり大坂?二人の間のお約束のセリフのキャッチボール。オババは「男前(春之丞)が好き」なんだそう。楽屋オチもあって、おかしい。また、オババの孫娘役のあゆちゃんがおかしい。このあたりのセンス、まさに花吹雪なんですよね。

 

小鉄は二代目に加勢すべく葵組に乗り込む。オババもその後を追う。葵組には誠太がすでに乗り込んでいる。そこに二代目も。そして小鉄、オババも。二代目が敵討ちに成功するところで幕。

 

舞踊ショーでの工夫

「花吹雪祭り」ということで、群舞が多かったのですが、舞踊ショーでよかったものは以下。

 

第一部では春之丞座長の「流木」。立ち姿がオトコマエ、王者の風格でした。京之介座長の「最後の雨」はドキッとする色気があり、以前よりぐっと前に出た感じがしました。

 

第三部の群舞の「極楽浄土」?座員全員が袴姿で扇を持って。照明が幻想的ですばらしい。同様に群舞の「Run japanese version」が斬新でした。

アンコールでは「ズッコケ男道」。楽しかった。