yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

喜多流、塩津哲生師の社中会「哲門会」@十四世喜多六平太記念能楽堂11月12日

友枝昭世さんシテの『綾鼓』を今年1月に大槻能楽堂でみてはいるが、喜多流を流派全体として見たことはなかった。白洲正子さん所縁の喜多流。塩津晢生さんの社中会があると知って出かけた。今回の東京行きの主たる目的。

社中会はその流派の、かつ主宰される能楽師の方のカラーがとてもよく出る場だというのが、「社中会荒らし」?をさせていただいた結果の感想。味方玄さんの社中会「青嶂会」は東京と京都で参加させていただいたけれど、味方玄さんの芸のみならず、お人柄のすばらしさが社中の方々からも伝わってくる会で、いずれも大感激した。吉井基晴さんの湊川神社神能殿の社中会「観井会」、赤松禎友さんの大槻能楽堂での社中会「赤松禎韻会」いずれも圧巻だった。京都観世会館でもいくつかみている。最近では片山伸吾さんの社中会「幽花会」は芸の高みが際立っていた。それに笛方の杉市和/信太朗さんの社中会「杉会」。楽しく、素敵な会だった。河村晴久さん主催の河村能舞台での社中会「青嵐大会」。こちらもとてもアットホームの中にもトップの囃子方のツレ演奏に圧倒された会だった。

観世流シテ方々の社中会。手ぶらで伺っているのに、ここまでのレベルの高い社中の方々の演奏、演技、それにプロのお囃子方のジェネラスな演奏に感激することしきりだった。懐の深さにしみじみと感謝した。

一昨日の喜多流「哲門会」。塩津哲生さんの舞台は見たことがなかったので、とても楽しみにしていた。ここでは素謡「三輪」のツレと後見をされていたのだけれど、声に力がないように拝見した。望外の喜び(?)だったのは友枝昭世さんが素謡「小原御幸」のツレ(法皇)をされたこと。あの謡は確かにDVDでしかみていない観世寿夫さんのそれを偲ばせるものだった。ちょっとお疲れ気味の感じではあったけど。

前半の(おそらく)社中会の中でも若手上級レベルの方々が地謡を務められ、その地謡メンバーの方々が代わる代わるに仕舞を舞われたのがとても良かった。勢いがあった。中でも動きのキレの良さとパワーとに感心したのが、「鵺」を舞われた笠置英史さん。社中会の間中、ずっと後部座席に座られてお仲間の社中の方々の晴れ舞台をじっとご覧になっておられた。僧侶でいらっしゃるのかも。佇まいの美しい方だった。

能は2本。『半蔀』と『羽衣』。ワキはいずれの演目も宝生欣哉さん。地謡に並ばれる能楽師の方々は大島輝久さんを除き全員知らない方ばかり。囃子方も同じ。ここで嬉しい発見が。大倉源次郎さんの甥御さんの大倉慶乃助さんの大鼓が迫力満点の力強い演奏だった。パワフルな中にも強弱のつけ方が絶妙の掛け声。さすが源次郎さんの甥御さんと納得。囃子方の中でピカイチだった。演奏もそうだけれど、揚幕から出てこられ橋掛りを歩まれる姿に、またスキッとした演奏時の姿勢の正しさに、身体の隅々まで行き渡っている名人芸の片鱗を確認できた。

お囃子方に関しては、大倉慶乃助さんを除いて圧倒的に関西勢が優れていた。普段どれほどすごい演奏を浴びるがごとく聞いているのか。その幸運を噛みしめていた。

社中会としての雰囲気も京都をはじめとする関西の方がずっとよそ者に対して寛容な感じがした。ロビーでの受付等、いささか排他的な雰囲気を感じてしまった。思い過ごしかもしれないけれど。何れにしても京都、大阪、神戸の観世流の懐の深さを改めてありがたいと思った。