yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「劇団心」(碧月心哉座長)の『泥棒哀歌』@池田呉服座9月14日昼の部

ハプニング続きの起伏に富んだ一日になった。なぜかは後に書く。

2日前、恋川劇団におられた恋川心哉さんならぬ碧月心哉さんが最近立ち上げられたばかりの「劇団心」を初観劇。先週末に「劇団悠」におられた嵐山錦之助さんがゲストで出ておられると聞いたばかり。心哉さん、錦之助さんの競演を見ることができてラッキーだった。さらにラッキーだったのは、「劇団時遊」の烏丸遊也座長とそのお母様の十川流(つなしせんりゅう)さんを拝見できたこと。このお二方が素晴らしい舞台をされるのをかねがね聞いていたので、機会があればぜひ見たいと思っていた。

2日前のお芝居は『釣り忍』で、心哉座長が定次郎、この日のみゲストの京未来ちゃんがおはん役だった。未来ちゃんは7年前に見たっきり。小さなお嬢さんが芸達者な女優さんに成長されていて、感無量だった。ゲスト初日の烏丸遊也座長は本家の耄碌爺さん役。ちょっと遠慮気味の「やりたい放題」ではあったけれど、十分におかしかった。お母様は白金屋の女将役。お二人とも図ぬけてお上手だった。これは予想通り。

本日のお芝居は『泥棒哀歌』。これは恋川劇団で何度も見ている。つい先月も新開地劇場で観たばかり。今日のは時間の関係上、前半の一部が端折られていたのがかなり残念。元々盗人一味にいたたんざが、なぜ盲目の「母」の元にやってきたのかが重要な鍵になっているのに、その部分がなかった。その部分は以下。

錠前破りで鳴らしたたんざ、その彼が役人に捕まってしまう。でも彼の生い立ちを哀れんだ役人が、知り合いの盲目の老婆の許に、行方不明になっていた彼女の「息子」として送り込む。そこで親孝行をすれば、罪を赦してやるという条件で。非常に重要な部分なので、ないと最後まで「なぜ?」が付いて回る。たんざが息子に化けることができたのは、母の息子はずっと以前に家出していて、母は悲しみで目が見えなくなっているから。

その続きは以下。

たんざ(錦之助)は盲目の母のもとで「息子」として暮らすうち、次第に情がうつり、今や実の親子以上に睦まじく暮らしている。大工としての腕も上がってきている。妹のやっている食堂もうまく行っている。ただ、いつも不安に苛まれて入る。というのも、たんざは盗人頭領(要正大)に無断で一味を抜けているので、彼らに見つかれば命はないから。

大店から五千両を盗み出す計画を立てた頭領、とうとうたんざを探し当ててしまう。錠前破りに協力しないと、盲目の母の命はないと脅す。仕方なく承知して、家に帰るたんざ。頭領はその後を、一の手下の小頭のしんざ(心哉)につけさせる。

たんざ宅。盲目の母(十川流)が娘と帰りの遅いたんざを心配している。一年前にたんざを見つけ出し、連れてきてくれた役人が様子見周りに訪ねてくる。たんざにおかしいところがあれば、すぐに連絡するようにと言い残す。

やっと帰ってきたたんざ。安堵する母。店に小頭のしんざがやってきて、たんざの妹に酒を注文する。たんざを見張りにきたのだ。奥からたんざと母のやりとりが聞こえてくる。何気なく聞いていたしんざの顔色が変わる。母がたんざに聞いていたのは、幼い頃に柿の木から落ちた時にできた傷のことだった。たんざは実の息子ではないので、正確に答えられないでいる。盃の酒に左の生え際にくっきりと刻まれた古傷を写すしんざ。彼こそが老母の実のせがれだった。

頭領の命でしんざを付けて来た盗賊一味の男が戸口にいる。しんざに帰れと言われ不審に思い、即刻棟梁に知らせに走る。

しんざが去った後、たんざも血相を変えて出て行く。ただならない様子のたんざに老母の心配が募る。そこへ折良くやって来た役人に訴える老母。役人はたんざの後を追う。母も彼と同伴する。

一味のアジトで頭領と対峙するたんざ。錠前破りはしないと訴える。聞く耳を持たない頭領は、たんざに斬りかかる。間に入って来たのはしんざ。一味の下っ端をことごとく斬り殺し、最後に頭領と相まみえる。しんざは頭領を殺したけれど、自身も瀕死の重傷を負う。虫の息の中で、たんざに例の傷の真の箇所を伝える。

そこに役人と、母、妹がやってくる。母の杖を持ってたんざが去りかける。去って行く母の後ろ姿に、息も絶え絶えの中で「おっかさーん」と絶叫するしんざ。母は後ろを何度も振り返りつつ、去って行く。上からは雪。スポットライトを浴びながら絶命するしんざ。

芸達者さんばかりで安心して観ていることができた。

口上途中で、心哉さんが大慌て。なんでも池田のアゼリアホールで、大衆演劇コーナーがあり、そこに3時過ぎから出演とのこと。でもそこは恋川劇団出身の心哉さん。40分ばかりの舞踊ショー、律儀にもできうる限りの曲が詰めこんっであった。これこそが「恋川の誠意」なんですよね。大衆演劇でここまで誠意のある劇団は他に2、3の劇団を数えるのみ。

で、ほとんどの観客が民族大移動。電車と徒歩でアゼリアホールへ。30分ばかりかかった。アゼリアホールは「池田市敬老会」の年に一度の催しということで、千近い客席がほぼ満員。舞台も商業演劇の舞台なので、だだっ広い!

ここで劇団心のメンバー一同が打ち揃い、1時間以上にもわたる素晴らしい舞踊ショーを魅せてくれたですよ!感激!広い舞台もなんのその、端から端まで走り回り、躍動感あふれる舞台だった。特に座長の心哉さんの活躍ぶりには目を瞠った。観客全員が魅せられたに違いない。加えて烏丸遊也さん、要正大さんという二人の「座長」さんたち。そこに十川流さん、颯天連さん、嵐山錦之助さんといった一流の名手たちが一曲一曲、入魂で踊られた舞踊ショー。それがすごくないはずがない。感動した。選曲、衣装共に納得の舞台だった。

一番すごいと感心したのが、にわかの舞台でここまでの完成度だったこと。去年の10 月、大阪の大きなホールで8千円も払い、大衆演劇大御所の芝居と舞踊ショーを観たことを思い出した。何日もかけて稽古した舞台だったんだろうけど、中心にいる総帥、そして座員一人一人の実力は、今日の劇団心のそれにはるかに及ばなかった。「化石」(もしくは「dinosaur」)に等しかった。芝居も舞踊ショー共に。嗚呼!