yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

恋川純劇団 お芝居『情けの捕り縄』@新開地劇場8月29日昼の部

既視感はあった。でも前に見た時とは内容がかなり変えられていたよう。まだ純弥さんがおられた頃だから、ずいぶん前になるはず。でも今回の方がずっと良かった。前よりもずっとシンプルになっていた。

以下、登場人物の名を控えていないので、当て推量でご容赦。

主人公は昔「捕り縄のお新」と異名をとったこともあるお新(真子)。捕り物の際、メクラつぶてを食らって盲目になったため、十手捕り縄をお上に返し、今は妹のおりく(純)と二人細々と暮らしている。おりくは多少知恵遅れ。

彼女の腕を惜しむかっての十手持ち仲間(初代純)が、彼女を役人に取り合ってくれて、再び十手を預かることになる。その仲間と姉が番屋へ出向いた留守中に事件が起きた。妹のおりくが一人で留守をしているところに、手配中の盗賊が逃げ込んできた。上から下まで黒装束なので怪しむところだけど、ちょっと足らないおりくは彼を匿ってしまう。しかも、賊を追ってズカズカと家に入り込んできた別の岡っ引き(千弥)を、逆に追い返す始末。

おりくに感謝して立ち去ろうとするくだんの賊(風馬)。ふとみた仏壇には二つの位牌が。その位牌に刻まれた名をみた賊、はっと驚く。ここで思い入れ。無邪気に自分の父母の位牌だと応えるおりく。賊はそれならお前の名はおりくかと尋ねる。ここで、この男がおりくの兄であることが分かる。賊は懐から取り出した財布を嫌がるおりくに押し付け、出て行こうとする。

その賊と帰宅した姉とが鉢合わせ。おりくは「おじちゃんからお金をもらった」という。怒る姉。その姉に男は財布を再び押し付ける。今度は姉がはっとなる。立ち去ろうとする賊に向かって、「お前は弟の新吉だね。いや、今お尋ね者の賊だね」という。観念する男。詰る姉に向かって、自分が故郷を出奔した経緯、また江戸にやってきてからの苦労、盗賊に身を落とさざるを得なかった境涯を切々と訴える。それでも縄を打とうとする姉。

そこに例の親切な親分がやってくるが、姉はこの場は自分に任せてくれといい、男には観念しろという。そしておりくに自分の代わりに男に縄を打てという。嫌がるおりく。でも最後には男の手を括る。

物陰から様子を見ていた親分は、すっかり事情を呑み込んでいて、あえて前に出ることはしない。姉は縄を打った弟を引いて番屋に向かう。

花道のところで(定石通りの)涙、涙の場面が展開する。大衆演劇お定まりのウェットさ。お二人とも感情を移入して大奮闘。タイトルの「情けの捕り縄」が立ってくる場面。と、そのはずだったんですけどね。後ろから付いてゆくおりくのおかしい様が、悲劇を転覆させてしまう。お涙ちょうだいの愁嘆場が、すっかり喜劇っぽくなっている。この転覆ぶり、良かった。現代の感覚には、大衆演劇的な「やまあげ」は受けないと常々思ってきたので。

誰がなんといってもコメディは純さんですよね。他の座長さんでは都若丸さんくらいでしょう、ここまでレベルの高いコメディができるのは。新開地の今月の大入数が若丸劇団とほぼ同格になっていたところに、それがよく表れている。

純さんに「伝家の宝刀」がいくつもあることを認識させられた今日の芝居だった。こういう新しさを「いい」と感じるセンス、またそれをためらわずに出してみせるという勇気。これまでになかった座長のタイプ。本当に斬新ですよ。大衆演劇十八番の「情」のアピールがそれで殺がれるということはなくて、逆に際立たされるんですよね。こういう趣向をおもいつき、実践するというのはよほどの自信がなくてはできないだろうけど、それをあえてやってみせるというところに、大衆演劇の新世紀到来を感じとり、嬉しくなった。

舞踊ショーにも毎回唸らされる。今日はゲストなしのフルメンバー。といってもご両親を除けばたったの6人!それでこの充実度。舞台の隅々までにパワーがみなぎっていた。それが客席にまで広がり、熱気の交流が起きていた。

以下、舞踊ショーの踊り手と曲の一覧。といっても全部ではなく一部省略している。ご容赦。

純  女形  「ごめんね」

風馬 女形  「裏窓」

かれん 立ち 「夢歌舞伎」

純  女形天城越え

春城 立ち 「道化師のソネット
彼の成長ぶりには、目を見張るものがある。今月みた女形もその一つ。彼だけが純さんの「お弟子」さんなのだと、純さんが以前に口上でおっしゃっていたけど、他劇団では客に媚びるクセを身につけた新入りが多い中、彼はきちんと技を磨いている。まさにこの師匠にしてこの弟子あり。

千弥 立ち「ダーリン」

純  立ち 「契り」

純・風馬「晩秋歌」

群舞  「雪散華」

風馬  立ち 「初めてのチュウ」

純 立ち 「龍神」
どなたかが画像をあげておられないだろうか。龍神の舞で使う龍神の頭を使った気迫のこもった舞踊。最後の決めで龍神の目が光るんですよ!

ラスト  「花城」

他の劇団とこの劇団を差別化する目立った点をいくつか挙げると、まず曲の新しさ。あまり演歌っぽいものはない。演歌でもカバー曲だったりするところに、ひと工夫が。もちろん踊りもそれに合わせてコンテンポラリー度が高い。最後に、なんといっても純さんのパワフルでいて完成度の高い踊りを挙げなくては。見ると幸せな気分になること間違いなし。(ご本人を具現化したかのような)「ボンバーガール」のようなパンチの効き方が半端ない女形舞踊も素晴らしいけど、袴踊りもそれ以上に素晴らしい。今日の「契り」、感動してしばらくポカン。今まで見てきた「契り」の最高峰だった。