yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

大文字送り火能 〜蝋燭能〜『通小町 替装束』@金剛能楽堂8月16日

小野小町と深草少将のよく知られたエピソードをもとにした能。「『卒都婆小町』では老女になった小町が登場するけれど、こちらは霊となった小町。それもシテでなくシテツレとして。シテは深草少将で、もちろんこちらも霊になっている。解説の種田道一さんが「幽霊同士の喧嘩です」とおっしゃったのが、言い得て妙だった。以下が演者一覧。

シテ(深草少将の霊)/金剛永謹
シテツレ(里の女/小野小町の霊)/金剛龍謹
ワキ(僧)/江崎欽次朗

笛 /杉 市和
小鼓/曽和鼓堂
大鼓/谷口正壽

後見/宇高通成、豊嶋幸洋
地謡今井清隆、種田道一、廣田幸稔、今井克紀
    豊嶋晃嗣、宇高竜成、宇高徳成、山田伊純

あらすじとみどころを「能.com」からお借りする。

<あらすじ>
都・八瀬(やせ)の山里で一夏の修行[夏安居(げあんご)。九十日間籠もる座禅行]を送る僧のもとに、木の実や薪を毎日届ける女がいました。僧が、問答の末に名を尋ねると、女は、絶世の美女、才媛であった小野小町(おののこまち)の化身であることをほのめかし、姿を消しました。

市原野に赴いた僧が、小町を弔っていると、その亡霊が現れ、僧からの受戒を望みます。そこに、背後から近づく男の影がありました。それは小町に想いを寄せた深草の少将の怨霊でした。執心に囚われた少将は、小町の着物の袂にすがり、受戒を妨げようとします。

僧はふたりに、百夜(ももよ)通いの様子を語るよう促します。少将からの求愛に、小町は、百夜通って、牛車の台で夜を過ごせば恋を受け入れると無理難題を出します。少将はどんな闇夜も雨、雪の夜も休まず、律儀に歩いて小町のもとへ通いました。そのありさまを再現します。

百夜目。満願成就の間際、まさに契りの盃を交わす時、少将は飲酒が仏の戒めであったことを悟り、両人ともに仏縁を得て、救われるのでした。

<みどころ>抜粋
短い曲ながら、小野小町と深草の少将との掛け合いで、執心のありさまを見せ、百夜通いを再現する後半部は、生き生きした型や所作が多く、見ごたえがあります。もとの百夜通いの伝説では、百夜目に男が来られなくなる運命が語られますが、能では、仏縁を得て終わるかたちにしています。

金剛流能舞台を見るのは去る6月にこちらの能楽堂で見た『小鍛冶』以来で二度目。ただし、今回は演者が地謡を除き全く違っている。家元の金剛永謹さんのシテは正月の八坂神社での『翁』以来。また金剛龍謹さんの舞台は初めて。『小鍛冶』とはかなり印象が違ったのはそのせいかもしれない。「舞金剛」と言われるだけあり、キビキビした動きが特徴的だった。でも情を表現するところ、特に深草少将のシテが未だに断ち切れない小町への恋慕の情と彼女への恨みとの間で揺れ動くサマは、かなりあっさり目に演じられたように感じた。

少将が小町の後背肩に手をかけるあの場面、どこか男の優位性が立っていて、情的なものがさほど伝わってこなかった。ずっと観世流を見てきているからか、観世ならそう演じないのではと、感じてしまった。こればかりは好みのレベルになるから、如何ともし難いのではあるけれど。淡々と演じながらも情を醸し出すことは可能だろうけど、この時の少将にはあまりそれがなかったように思う。身体の意識の仕方が流派によってかなり異なるものであることを、改めて理解させられた。

情の部分、それが押し殺されたものであればあるほど、ほとばしり出るときのエネルギーは強くなる。そのエネルギー量がこちらに向かってくる感じがなかったので、終わった時も「えっ、もう?!」って、あまりにもあっけない感じがした。そう感じたのは私だけだった?

会場設営への不満をひとこと。照明はかなり落としていたけど、もっと暗くして、ほぼろうそくの明かりで見るようにした方が「蝋燭能」の意味あいが際立ったような気がする。先日の大槻能楽堂での「ろうそく能」ではもっと「蝋燭能」の意味が生かされていた。

それと、私の席は左側6列目の1番だったのだけど、5列目から座の高くなった補助席を左側に付けられたため、前の補助席に座った人の背が異常に高くなった。その結果、舞台の一部が完全に隠れた。柱よりはるかに目障りだった。満席だったからかもしれないけれど、もっと工夫の余地があったのでは?

10月29日、新作能『面影』(〜ポール・クローデル「女と影」による〜)がこの能楽堂にかかる。囃子監修を大倉源次郎さんがやられ、また小鼓も担当されるので、行くつもりにしていたけれど、やめようかと思っている。演者が今日と同じなので。たった2回しか通して見ていない流派を云々すべきではないかもしれないけど、ちょっと肌合いが合わない感じがしてしまった。