yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』@新宿武蔵野館 7月22日

「映画.com」掲載の「美しき異端のダンサー、セルゲイ・ポルーニンが来日「世界に足りないものを補うことが芸術の役割」に載った写真。インタビューの写真だけれと、これだけで彼がどんな人がが伝わってくる。何枚かの内の2枚だけれど、あの映画の中の彼の苦悩する姿が思い起こされ涙ぐんでしまった。あまりにも傷つきやすい繊細な心を持った彼が、やっと自分の居場所を見つけた確かさを感じた。よかった!

以下が映画サイトからの解説。

バレエ界きっての異端児といわれるダンサー、セルゲイ・ポルーニンを追ったドキュメンタリー。19歳の時、史上最年少で英国ロイヤル・バレエ団のプリンシバルとなったポルーニンは、その圧倒的な存在感と類まれな才能で「ヌレエフの再来」と称されながら、わずか2年後に突如として英国ロイヤル・バレエ団からの退団を発表。そのニュースは世界中を駆けめぐり、彼にまつわる様々な噂が飛び交った。その後、歌手ホージアのグラミー賞ノミネート曲「Take Me To Church」のMV出演で、ポルーニンは再び大きく注目されることに。写真家のデビッド・ラシャベルが監督をつとめてポルーニンが踊ったこのMVはYou Tubeで1700万回以上の再生数を記録し、それまでバレエに関心がなかった人々にもその存在を知らしめた。本人や家族、関係者のインタビューなどを通し、ポルーニンの本当の姿に迫る。

スタッフ
監督
スティーブン・カンター
製作
ガブリエル・ターナ
製作総指揮
キャロリン・マークス・ブラックウッド
クリスティーン・ランガン
ニコラ・マーティン
キャスト
• セルゲイ・ポルーニン
• イーゴリ・ゼレンスキー
• モニカ・メイソン

映画はドキュメンタリータッチで彼の今までの生涯を追う。といっても25年程度なんですけどね。なんという波乱万丈。それも天才がくぐり抜けなくてなならなかったもの。一つ一つのエピソードが胸を打つ。彼がここまで繊細な感性を持ち合わせていなかったら、一人の有能なバレエダンサーとして「生き延びる」ことはできただろう。それも不世出のダンサーとして。浮世が彼に托するありとあらゆる名誉をまとい、活動できただろう。ヌレエフの再来といわれたようだけど、ヌレエフのようなバレエダンサーとしての理想的な生き方を彼は選ばなかった。獲得したもの、それはダンサーだったらこれ以上ないほどの名誉なものばかりだったけど、それら一つ一つを自らから剥ぎ取ってゆく生き方。獲得するときにも十分苦しんだのに、剥ぎ取ってゆくときはさらなる苦しみが。誰もその苦悩を理解できない。

ごくわずかな友人たちが彼に寄り添った。ロイヤルバレエ時代の友人と一緒に海を見ているシーン、あれ秀逸だった。彼の孤独がダイレクトに伝わってきた。また、『Take me to church』に合わせて踊る動画の一コマ一コマにも彼の天才とそれゆえの孤独がにじみ出ていた。見る目を楽しませるというより彼の孤独に感染する、そんな感じだった。あれは、彼の生き方のあの時点での集大成だったのだろう。彼を苛む彼の中の「毒」を踊りで「祈り」へと昇華させているのが『Take me to church』だったのかも。歌詞に感応した彼の孤独がきつく迫ってくる。

そして、思わず羽生結弦さんの「Let's Go Crazy」を連想した。プリンスの歌詞は神への冒涜と祈りがないまぜになっているけれど、この「Take me to church」(2015/02/09 up)のテーマも似ている。ジェフリー・バトルが「Let's Go Crazy」を選んだのにこのyoutube動画が関係していたのではと、妄想してしまった。それはないか。

「Take me to church』が魂レベルの集大成だとすれば、この映画は(俗的な方の)彼を取り巻く環境の集大成を描く。ウクライナの片田舎の豊かでない家庭の出身。父と祖母は彼のバレエ学校の授業料を稼ぐのに出稼ぎに出た。母は彼について遠く離れたキエフへ。そのあともロンドンに渡った二人。家族はバラバラになり、これが父母の離婚へと繋がる。それを知った彼の苦悩。罪悪感。家族が彼の支えになっていたから。母との決別、父との再会。時として、あまりにも痛々しくて画面を正視できない。

救いは彼が二人を彼自身の公演に招待したこと。両親を見て嬉しそうな彼の顔が救い。これだとなんとか生き延びてくれるだろうって感じた。そして最初に挙げた来日インタビューの写真。落ち着いた感じになっていて、ホッとした。

この日は能の公演が午後2時から二つあり、その前に見た映画。「新宿武蔵野館」はいわゆるアート系の映画を何本もかけている映画館のようで、シネリーブル系列とは違ったものもかかっているようだった。東京在住なら足げく通うことになりそうなところ。この『ポルーニン』を見た後、待合のベンチでしばらくぼーっとしてしまった。前のモニターには見たばかりの映画のシーンが流れていた。私と同じく見入っている人も何人かいた。