yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

能楽名演集DVD 能『葵上』金春流 櫻間金太郎(弓川) 宝生新

1936年/PCL撮影スタジオ特設舞台)となっている。以下が演者。

シテ・六条御息所の霊:櫻間金太郎(弓川)
ツレ・照日の神子:櫻間龍馬
ワキ・横川の小聖:宝生新

これも、「よくぞ記録していてくれた!」とNHKに感謝する舞台。櫻間道雄さんの従兄弟に当たる櫻間金太郎(のちに弓川)氏がシテを務める。『葵上』を見るのは実演の二回分を入れてこれで三度目。実演の二回は観世流。これは金春で、観世とはいささか異なった感じがした。でもそれもこの舞台が録画だったせいかもしれないし、厳密にどこがどう違うのかというのは、まだまだ能の観劇歴の浅い私には確かなことは言えないけど。

DVDの『実盛』では道雄さんの姿の良さに感服したけれど、金太郎氏のそれも負けずに、あるいはそれを凌ぐほどの美しさ。特に足の運び。すっ、すっ、すーっとした足の運びに見惚れる。カメラがそこにスポットを当てて撮っているので、それが際立つ。推測するに、当時から金太郎氏の足運びには定評があったのでは。能演者はおしなべて足の運びは決まっているけど、彼の場合は凡庸の域ではない。ただ、美しい。白い足袋の返りが目に焼きつく。白足袋がまるで生き物のように、もっといえば清楚な女性の姿に見えてしまう。それでいて上半身は泥眼の面をつけた重〜い御息所なんですからね。このミスマッチが、この人の高貴さと、それとは相反する邪念の深さを表象しているのかもしれない。

このビデオ、海外向けの「教育」の一環だったよう。英語(音声と字幕)で解説が入る。それが実に的確。こういう風に「客観的に」解説された方が、なまじ日本語の「丁寧すぎる」注釈よりも受け入れ易いかも。これを逆に日本語に直して、日本の中、高、大の教育資料としたら、感銘を受ける生徒、学生が多く出そうな気がする。よくできていて、感心しきり。ちょっと「あれ?」って思ったのは、御息所をPrincess Rokujoとしていたこと。これはLady Rokujoですね。今の翻訳ではそうなっています。

この録画を撮ったとき、金太郎は47歳。当時なら中年というより、前期老年?だったのかも。でもこのすっきり感と爽やかさ!夜叉に変身してからも、さほど重くない。嫉妬と怨念のドロドロを表現しつつも、どこかに軽みというか、抜け感がある。これが金春流?華やかではあるのだけれど、豪奢な感じではなく、清潔な感じ。鬼の面を付けたシテをこういう風に形容するのは、無理があるのかもしれないけど。それが金太郎氏独自のものなのか、それとも金春流のものなのか、今の私には断言できないけど。だからこそ、この舞台が録画されていたことを、心からありがたく思う。