yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

三代目市川右團次襲名披露『通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)』@新橋演舞場1月14日昼の部

公演チラシは以下。

長い副題がついている。曰く、「壽新春大歌舞伎 市川右近改め三代目 市川右團次 襲名披露二代目 市川右近 初舞台」。澤瀉屋市川右近が三代目市川右團次を襲名した。初代右團次は上方の出身なので、同じく上方出身の元右近にとっては身近な名跡だったはず。左團次と同じ屋号になり「郄嶋屋」。初代右團次はケレンで鳴らした人で、それは三代目猿之助の「『猿之助歌舞伎』や『スーパー歌舞伎』に継承」されたという(出典Wiki)。三代目猿之助の弟子、市川右近にとっては願ってもない名跡といえる。ご子息が市川右近を名乗ることになって、ダブルでおめでたい。新橋演舞場がいつもより一層華やいでいたのは、このおめでたさを寿ぐものだったんですね。以下、「歌舞伎美人」から。

近松門左衛門
戸部銀作 脚本・演出
奈河彰輔 脚本・演出
市川猿翁 脚本・演出
石川耕士 補綴・演出
三代猿之助四十八撰の内
通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)
市川猿之助
市川右團次 宙乗り相勤め申し候
市川右近

猿島惣太後に七郎天狗/奴軍介 右近改め右團次
班女御前           猿之助
大江匡房           中車
淡路前司兼成         男女蔵
小布施主税          米吉
次郎坊天狗          廣松
梅若丸/松若丸        初舞台右近
局 長尾           笑三郎
勘解由兵衛景逸        猿弥
惣太女房 唐糸        笑也
吉田少将行房         門之助
県権正武国          海老蔵

<みどころ>
双子とその母、旧臣の悲劇を描いた大スペクタル絵巻
 吉田の少将行房は比良が嶽の次郎坊天狗の恨みをかい、我が子の松若丸を天狗にさらわれ、自身も殺されてしまいます。
 松若丸の双子の兄弟梅若丸は、吉田家の横領を企む勘解由兵衛景逸たちにそそのかされ、朝廷よりお預かりの「鯉魚の一軸」の絵の鯉に目を描き入れたため、鯉は絵から抜け出し梅若丸は出奔、心労が重なった少将の妻班女御前は狂乱してしまいました。
 吉田の家来だった淡路の七郎は、使いこんだ主家の金一万両をつぐなうため猿島惣太と名のって人買い業を続け、あと10両までこぎつけたところで、都生まれの稚児を折檻して殺してしまいます。その稚児が若君の梅若丸と知った惣太は非を悔い、天井を突くと家中に貯めた小判が降りしきるなか壮絶な最期を遂げ、その一念によって天狗となります。
 我が子を求めて隅田川のほとりへさまよい来た班女御前は、惣太の女房唐糸から梅若丸の死を聞き、川に身を投げようとしますが、松若丸に再会して正気を取り戻します。お家再興のため、七郎天狗となった惣太に送られて、班女御前と松若丸は都へ向かって宙を飛んで行くのでした。

 “三人宙乗り”や本水の中での大立廻り“鯉つかみ”の場などスペクタクルにあふれた大作です。新右團次は猿島惣太後に七郎天狗、奴軍介に挑み、右團次の子息、二代目市川右近が松若丸、梅若丸の二役で初舞台を踏む舞台にご期待ください。

「隅田川」というタイトルから明らかなように、能の『隅田川』を採ったもの。子別れと再会というテーマは同じ。子の名前も「梅若丸」をそのまま使っている。「雙生(双子)」という設定は話をハッピーエンドにするためのもの。亡くなった我が子は双子で、最後にはもう一人の子供と再会することにしてある。

ストーリーは引用した「みどころ」のとおり。

ケレンで見せる場がいくつかあるが、その一つが絵に描かれた鯉が絵から抜け出すというもの。後の場面、巨大な鯉が琵琶湖を泳ぐというところでは、客席から歓声が。生々しく、色っぽい鯉だった。

もう一つのものは大詰めの「七郎天狗となった惣太に送られて、班女御前と松若丸は都へ向かって宙を飛んで行く」という三人宙乗りの場面。襲名披露の右團次、右近、そこに猿之助が加わってのもので、この組み合わせにも人は拍手喝采しただろう。ここでも大きな歓声があがっていた。歌舞伎の観客が単に芝居そのものを見に来るだけではなく(もちろん私のようにそれだけという人間もいるでしょうが)、こういう連綿と続く歌舞伎の家のつながりを楽しんでいるということが、よくわかった。

怪奇趣味的なところもあるということだけれど、そこは極力抑え気味だったような。生々しかったのは鯉のみ?

それにしても右團次襲名はめでたい。今まで以上に嬉しそうだった右團次。いつもよりちょっと遠慮気味が感じだったのは、子を気遣ってのことだったのかも。右近ちゃんも前にタケルで見た時より緊張気味だった。

うまい若侍が出てきたと思ったら、なんと米吉だった。女方ではなかったけど、目立つ華があった。女方といえば、やっぱり笑三郎が素敵だった。声よし、姿よし。猿弥さんはいつもながら手堅い。それに圧倒的存在感。存在感といえば中車もちょろっと出て来るだけだけれど、なんかおかしい。存在感がある。

そして、猿之助のあの道行舞踊!素晴らしかった。きちっとしているのに伸びやか、何よりもその華やかさ。もっと見ていたかった。

「ケレン」ということについて、少し考えさせられた。先人が舞台に初めて乗せた工夫としては、大いに刺戟的だったはず。でもそれをそのまま「使う」と陳腐化する恐れがある。さらに工夫を凝らすにはどうしたらいいのか、難しい課題だと思う。

一つ嬉しいニュースが。演舞場のロビーにかけてあった掲示。澤瀉屋の喜昇さんが二代目右若(高嶋屋)を継がれることになったとのこと。先ほどウェブで確認したら、大阪出身だと思っていた彼はなんと甲府のご出身。大阪的な笑いのセンスをいつも振りまいておられるので、てっきり関西出身だと思っていた。新右團次をサポートするのに、これ以上ない力になられるだろう。