yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

地唄舞『古道成寺』in 「にっぽんの芸能 『上方の舞を楽しむ』」NHK Eテレ11月13日

録画してあったもの。途中からだったのだけど、今日やっとゆっくりと見ることができた。そんなに期待していなかったので、ざっとスキムするつもりが最後まで見てしまった。清姫を踊った吉村輝章さんの舞踊があまりにもすばらしかったから。男性が女性を踊って、ここまで嫋やかなのを見るのは初めて。以前に玉三郎が地唄舞を踊ったのにも圧倒されたけど、今回のものはそれとはちょっと違っていた。玉三郎は「女方」として女性を踊ったのだけど、吉村輝章さんはあくまでも男性として女性を踊ってみせた。衣装も男性のもの、鬘もつけていない。それであの色っぽさですからね。もう言葉がありません。以下にお二人の画像入りの「SPICE」サイトをリンクさせていただく。

spice.eplus.jp

日本舞踊に関しては、ましてや上方舞についてはまったくの素人の当方。早速検索をかけた。吉村輝章さんは吉村流の現家元。相手の安珍を踊った山村友五郎さんは山村流の家元という。道理であの完成度なんですね。いずれもが家元の名に恥じない舞だった。何百人ものお弟子さんたちを統括するには、真の上手でなくては務まらないだろう。加えて存在感も必須条件だろう。お二方共にどちらも備えておられた。今までほとんど知らなかった日本舞踊の、とくに上方舞の奥深さを認識させられた。

清姫のあの情念を舞踊で表現するんですよ。もちろん歌舞伎では何度も見ている。ただ、歌舞伎の舞台とはまるで異なっていた。どちらかというとその抽象性で能の舞台に近いかも。歌舞伎のような艶やかな凝った舞台装置はない。安珍を匿う釣鐘も扇二枚で表す。極限まで切り詰められたシンプルな舞台。ほとんど何もない舞台で安珍・清姫のドロドロの怨讐劇が繰り広げられる。舞台に何もないのに、いかにも部屋があったり、川があったり、釣鐘が見えるのです。あたかも実在しているかのように。これが可能なのは踊り手が名手だから。

もう一つ気がついたこと。人形浄瑠璃との親近性。語りがそう。また演者の「人形振り」がそう。安珍が清姫から逃げ出すときの踊りの振りが、そのまま文楽の人形のそれだった。身体つきも所作も。足の裏を見せながら駆けてゆくサマはまるで人形。以前に見た『日高川』での人形の動きそのままだったのには、仰天した。それとともに、古典芸能間の繋がりが私が想像していた以上に強固であることを認識させられた。互いに影響し合いながら発展してきたんですね。ごく当たり前のことなんだけど、こういう風に実際の舞台で「証明」されて、やっと分かった。

以下にNHKサイトから借用させていただいたこの演目の情報をアップしておく。

■日時:Eテレ 11月10日(金) 23:00~23:55 (再放送:13日正午0時)
■出演:【司会】石田ひかり、秋鹿真人【ゲスト】くまざわあかね
●地唄舞『古道成寺』(22分55秒)
作詞:不詳、作曲:岸野次郎三(原曲)、振付:吉村雄輝
【舞】吉村輝章(清姫)、山村友五郎(安珍)
【地唄】(唄と三絃)富山清琴、(筝)富山清仁
【囃子】藤舎呂秀、堅田新十郎、住田福十郎、(笛)中川善雄
(「日本舞踊協会公演」より、2017年2月18日 東京・国立劇場)

もっと役にたったのが「SPICE」のサイトに載った以下の解説

「Eテレで、上方舞の人気演目『古道成寺』『三ツ面椀久』を放送、吉村流家元と山村流宗家による話題の舞台」

2017年11月10日(金曜、23時~)のEテレ『にっぽんの芸能』では「上方の舞を楽しむ」と題して、上方舞の『古道成寺』と『三ツ面椀久』の二題を放送する。ゲスト解説は、上方落語作家くまざわあかね。

上方舞は、江戸時代に京阪地域で能や御所の御殿舞を源に発展した舞の総称。歌舞伎舞踊を振り付け指南したり、花街の座敷で舞われたりするなかで広まり、独自の発展を遂げた。三味線伴奏などで唄われる流行歌「地唄」とともに踊られることが多いので地唄舞とも呼ばれるが、常磐津、長唄なども使われる。複数の流派が生まれ、なかでも吉村流、楳茂都(うめもと)流、山村流、井上流は「上方四流」と呼ばれている。

二題のうち『古道成寺』は、安珍清姫伝説を題材にした道成寺もの。イケメン修行僧の安珍に恋した清姫が、逃げる安珍を追いかけ、ついには大蛇となって、安珍が身を隠した道成寺の鐘に巻き付いて焼き殺してしまう。恋の情念が怨念と化したこの話をもとにした舞踊は、元禄(1688~1704)頃から上演されていたときく。本作もそんな最古の部類のようだ。
奥州から熊野へ修行にいく山伏(=安珍)が、逗留先の真砂(まなご)の庄司という人の娘(=清姫)に言い寄られるという設定。なんと、娘が夜中にこっそり部屋に忍び込んで迫ってきたので、山伏は困惑する。なんとかはぐらかし、闇にまぎれて密かに宿を逃げ出した。謀られたと気付いた娘は、悔しさから山伏を追いかける。水かさの増した日高川を前に、娘は毒蛇と化し、ざんぶと飛び込んで……。

これを、上方舞を代表する家元ふたりが共演する。吉村流六世家元・吉村輝章(きしょう)が娘(=清姫)を、山村流六世宗家・山村友五郎(ともごろう)が山伏(=安珍)を務める。今年60回を迎えた『日本舞踊協会公演』での舞台を放送。1957年に始まったこの公演は、古典舞踊の名作はもとより、近現代の名人や若手舞踊家の振り付けによる作品などさまざまな日本舞踊を、若手から重鎮まで日本を代表する日本舞踊家が披露。2月18日に国立劇場(東京・千代田区)で開催された。

歌舞伎などでは娘の衣装を引き抜き、蛇に変身させて場を盛り上げるが、この舞では帯に工夫がされている。また、地唄の三味線や筝、お囃子による音楽も効果的で、山伏が夜半に逃げていくシーンや、娘が毒蛇となって日高川に飛び込み、炎を吹きながら大河を渡るシーンなどの演奏は特に迫力満点。

借用させていただき、大感謝。付け足すことはありません。