yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

市川猿之助主演 シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎IIワンピース』@尼崎MOVIX 10月24日

舞台版を新橋演舞場で昨年10月に見ている。シネマ版はそれをずっと凝縮、映像ならではの手法を駆使、ソフィスティケイトされたものになっていた。どなたが編集の指揮を取られたのでしょうか(もちろん猿之助も加わっていたのだろうけど)、知りたい。クレジットで確認しそびれたので。

シネマ歌舞伎『スーパー歌舞伎IIワンピース』の公式サイトをリンクしておく。以下、松竹のシネマ歌舞伎サイトからの情報。

国内外で絶大な人気を集めるマンガ「ONE PIECE」の世界と四代目市川猿之助による「スーパー歌舞伎Ⅱ」が奇跡の融合を果たした舞台、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』。

2015年10月に新橋演舞場でスタートを切り、大阪松竹座、博多座と公演を続け、多くの観客の心を惹きつけてやまない超人気作がついにシネマ歌舞伎化!

シネマ歌舞伎版は新橋演舞場公演を撮影。映像ならではのカットをふんだんに盛り込んで、舞台版の魅力のエッセンスを凝縮しました。上映時間2時間弱と見やすく、誰もが楽しめる映像作品として全国の映画館に登場します。

配役
• モンキー・D・ルフィ/女帝ボア・ハンコック/赤髪のシャンクス:市川猿之助
• エドワード・ニューゲート(白ひげ):市川右近
• ロロノア・ゾロ/ボン・クレー/スクアード:坂東巳之助
• サンジ/イナズマ:中村隼人
• ナミ/サンダーソニア:市川春猿
• はっちゃん/科学部隊隊長・戦桃丸/ニューカマー・スー:市川 弘太郎
• 女医ベラドンナ:坂東竹三郎
• ニョン婆:市川笑三郎
• ジンベエ/マーシャル・D・ティーチ(黒ひげ):市川猿弥
• ニコ・ロビン/マリーゴールド:市川笑也
• 監獄署長マゼラン:市川男女蔵
• 中将・大参謀つる:市川門之助
• ポートガス・D・エース:福士誠治
• ブルック/大将‘赤犬’サカズキ/ニューカマー・サッチン:嘉島典俊
• 元帥センゴク/エンポリオ・イワンコフ/シルバーズ・レイリー:浅野和之


あらすじ
ルフィと仲間たちは、大秘宝ワンピースを探す大いなる航海の途中。

しかし、シャボンディ諸島での海軍との戦いでルフィと仲間たちは散り散りになってしまう。

一人になったルフィは兄エースの処刑宣告を知り、救出のため監獄インペルダウンへ向かうが、エースはすでに海軍本部マリンフォードへと移送された後であった。

エースを救おうとする海賊団やルフィと、海軍との間で壮絶な戦いが今始まる――!

新橋のあと、大阪松竹座、博多座と続いた公演。シネマ版は新橋のもの。配役も私が見たときのまま。だから印象は同じはずが、まるっきり違っていた。実はこのシネマ版、新橋公演にさほど感銘を受けなかったので、パスするつもりだった。でも上演時間が2時間と大幅に短縮されたとわかり、かなりの編集がなされていると推察、その結果に興味が湧いた。

シネマ歌舞伎の『三人吉三』と同じく、映像化の利点を最大限生かしていた。テーマは「兄弟愛」、もっといえば普遍的な人類愛(?)なのだろうけど、それが歌舞伎公演では立ち上がってこなかった。最後の幕の家族愛を謳う「説教」が煩わしかった。シネマ版はそこがかなり薄まっていた。もちろんストーリーそのものはそこに収斂するようになっているわけで、それを外してはいない。でもその部分がやたらと押し付けがましく前面に出てくることはない。

随所に歌舞伎の見得やら歌舞伎調の口説、歌舞伎の(先日染五郎で見た)碇知盛の崖上での立廻りやなどもあったっけ。澤瀉屋の面々がするのは当然として、「えっ?」と驚いたのが、歌舞伎役者ではない浅野和之が『伽羅先代萩』中の政岡の千松を抱いてのセリフ、「でかしゃった、でかしゃった、でかしゃったわいのう」をいうところ。さりげなくパロディとして導入されていた。この歌舞伎感が先日見た『真田十勇士』にはまったくなかった。それも当然、歌舞伎役者は勘九郎だけだったから。『ワンピース』はコラボといっても、中核には歌舞伎役者が打ち揃っている。この差は大きい。改めて歌舞伎の、何よりもその役者たちの底力を認識させられた。

『ワンピース』のマンガ、アニメは海外でも人気があるようなので、英語版を作り、海外公開をしたらいいのでは。もうすでにその企画はある?

で、役者さんたち。猿之助が思いっきり弾けている(ハジけようと努力している?)のが映画版ではひしひしと伝わってきた。新橋演舞場で観劇した折には、舞台の前から2列目だったので、役者の一挙手一投足に目が行きがち。等身大の役者ばかりを見ることになる。映画版はそれを補ってくれた。舞台の全体、そしてそこを縦横無尽に駆動する役者との関係がよくわかった。ワクワク感が強まった。

澤瀉屋の役者は皆素晴らしかった!猿弥、春猿(そういや、新派に入団されるんですね)、笑也、笑三郎、右近、門之助、男女蔵と贅沢な顔ぶれ。なかでも右近が出色。

前の記事にも書いたけれど、ロロノア・ゾロ/ボン・クレー/スクアードの三役を見事にこなした坂東巳之助が素晴らしい。特にボン・クレー!あのルフィを裏切ってしまったという「嘆き」の部分、かなしいやらおかしいやら。また、サンジ/イナズマの二役の中村隼人も良かった。この方、舞台版で見たときより、映画版の方が「立って」いた。ヴィジュアル的には当然なんだろうけど。若手一番の美形ですからね。

そして、エースを演じた福士誠治。舞台で見たときには精彩を欠いているように見えミスキャストだと思ったのだけど、映画ではヒーローとして立っていた。編集の仕方が大いに関係しているのかも。どちらかというと映画、テレビ出身の役者は映像になった方が大きく見える。とはいえ、悲劇性がここまで演じれれるのはやはり優れた役者であることの証左。もともと彼のファンなので、嬉しい。

この『スーパー歌舞伎II ワンピース』、来年にも再演されるとの発表に、映画を見ていた観客から歓声が挙がっていた。