yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『恋の高瀬舟』桐龍座恋川純劇団@新開地劇場8月10日夜の部

お芝居『恋の高瀬舟』
以前にも見たことのあるお芝居。「たつみ演劇BOX」でだったような。細部は控えていないので、誤りあればご容赦。

茶店前。若い娘、おみよ(かれん)が連れ去られそうになっている。おみよは大店、伊勢屋の若旦那(真子)の許嫁だった。お千を見初めた武家(風馬)が彼女に横恋慕、仲立ちを土地の雷親分(千弥)に頼んだのだった。「借金のかた」を理由に、雷親分とその子分がおみよを無理やり連れて行く。飛び出してきたのは伊勢屋の若旦那。なよなよした若旦那、子分たちにあっけなく倒され気絶。そこに行き合わせた浪人、秋月(心哉)。なんとか止めようとするが、娘は連れて行かれてしまう。

秋月の朋輩の井貝五九郎(初代)が茶店から出てきて、気絶した若旦那を連れて帰ることになる。

雷の親分は寄宿していた女俠客のお千(純)に、「土地の鼻摘まみの浪人者」秋月を殺すよう依頼。前金として5両を渡す。これでは少ないというお千に、残りの5両は成功報酬だと言う親分。

秋月がやって来る。それを待ち構えて持っていた短刀でうちかかるお千。返す秋月、浪人とはいえやはり武士。お千はあっけなく短刀を落とされてしまう。「殺せ」と、開き直るお千。ただ秋月はお千が実は男と見抜いていた。正体を見抜かれ、いっぺんに「男」に戻るお千こと千太郎。話をしているうちに打ち解け、親分の話が嘘だったことに気づく千太郎。秋月が問うままに、女の格好で旅をかけている理由を話す。彼の幼馴染であり許嫁でもあるお小夜を探しての旅なのだと。お小夜との結婚をお小夜の父の庄屋に反対され、村を飛び出た千太郎。村に帰ってみると庄屋の家は火事で消滅。庄屋夫婦は焼死。娘のお小夜の行方もわからなくなっていたのだと。

秋月からことの次第を聞き、ともに娘を雷から取り返す助けをすると約束する千太郎。秋月の住処にやって来る。それは草ぼうぼうの寺。奥から井貝五九郎登場。お千を見て、早速鼻の下を伸ばしている。お千が男だと知って、がっかり。ここ、おかしい。

奥から若旦那も出てきて、秋月、井貝、千太郎に、おみよを取り返してくれるよう、懇願する。夫婦約束ができているのだと。しかもおみよは鳥目で、夜は全く目が見えなくなってしまうのだと。

処変わって雷宅。おみよが縛られている。傍には布団が敷いてある。そこに忍び込んできたのは男に戻った千太郎。おみよの顔を灯りで見て驚く。それは彼が探し求めていたおさよだったから。ただ、その驚きを隠す。おみよを秋月たちに連れ出させ、自分は布団の中へ。そこへやってきた旗本。布団に潜り込む。すかさず斬りつける千太郎。もがく旗本。ここ、おかしい。絡みつく風馬さんの手、足を必死で振り払う純さん。なかなか手強かったよう。後の口上で、「男に抱きつかれるなんて、気持ち悪くて大変だった」と仰っておられました。

秋月、井貝の助太刀で雷一家を討ち、おみよを取り返した千太郎。船着場にやって来る。舟の上には若旦那の姿が。その時、秋月が「千太郎」と呼ぶのを、聞きつけたおみよ。千太郎にすがって、目が見えるようになる時刻まで舟を出すのを待たせてくれと言う。それを無理に舟に乗せ、舟を押し出す千太郎。

「千太郎さーん」と叫ぶおみよの声が響く。秋月が千太郎に「これで良かったのか?」と問う。「惚れた女の幸せを祈ってやるのも恋でござんす」と答える千太郎。「逢えたのに帰すのも男でござんす」と、やせ我慢を張る千太郎に傘をさしかけてやる秋月。

それぞれのニンに合った役だったこのお芝居。見ごたえがあった。千弥さんが一層上手くなっておられた。特に初代との掛け合いが楽しかった。予測できないアドリブをなげ返せるまでに「成長」された千弥さん。純座長のお千はまさに自家薬籠中の役。女から男に替わるところも、自然でいて、でもおかしみが十分に効いていた。こういう役、お兄様の純弥さんが演じられなかったもの。演じても多分うまく納まりきれなかっただろう。役の幅広さで純さんはお兄様を凌駕されている。

コメディなんだけど、最後にほろりとさせる見せ場があって、人情劇としてもなかなか。それを踏まえての純さんの演技、弱冠25歳とは思えない手練れの域。

口上がこれまた楽しかった。これもお兄様の淡々とした口上を超えていた。口上まで劇的!内容はかなり踏み込んだ客論議。「女性の心を掴むのがいかに難しいか」というのが、要点になるのだろうけど、それでは表しきれない諸々。おかしいやら(純さんが)気の毒やら。ホント、大衆演劇の客は独特ですものね。純座長の真摯さがズシンとこちらに響きました。

後ろ幕の間から千弥さんが「お時間です」の巻物を何度も。この趣向、今までの恋川さんの口上にはなかったもの。口上の上手さで、小泉たつみさんに張りあえる座長さんがやっと出てきたという感じ。感無量。これと、「お兄様を超えられた」というのを見送りの際、伝えたかったのだけど、根がシャイなのでできず。この日もやっぱりおばさま方に捕まっておられた大人気の純座長だった。もちろん大入り。気が充実している。