yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『伊勢音頭恋寝刃』第143回文楽公演@国立文楽劇場8月1日第2部

<演者>
古市油屋の段
 語り  竹本津駒大夫
 三味線 鶴澤寛治

奥庭十人斬りの段
 語り  豊竹咲大夫
 三味線 鶴澤燕三

人形   お紺  吉田簑助
     万野  吉田玉也
     貢   桐竹勘十郎   
     喜助  桐竹勘壽

津駒大夫さんの「古市油屋の段」は2012年にも聴いてこのブログ記事にもしている。あのしゃがれ声がなんとも言えない味を出しているのを再度聞けて、幸せ。三味線の寛治さんはその重い語りにそっと寄り添っての演奏。最近はこのコンビだったんですね。このどちらかというとアクの強い大夫と嫋嫋とした三味線の組み合わせは、後を引く演奏。

「奥庭の段」の大夫はいずれお父上の綱太夫を襲名されるであろう咲大夫さん。彼にのみお弟子さんの補佐(あの役はなんていうんでしょう)が付いた。文字久大夫さんが住大夫さんの「補佐」に就いて、床上でじっと聞いておられたのを思い出した。嶋大夫さんが引退されたので、咲大夫さんが今では大夫のトップということなんだろう。さすがの語り。渋さも以前より何割か増し。その渋い声があの凄惨な場を語る。それを煽るかのような燕三の三味線。ずっしりと堪えた。

前回見た折(2012年8月公演)、万野を遣ったのは紋壽さん、貢を遣ったのは玉女(現玉男)さんだった。今回の貢は勘十郎さん。玉男さんと同い年。このお二人が初代玉男さん、簑助さんの後継者最右翼ということになるのだろう。勘十郎さんの貢は清々しいいい男。だから最後のあの修羅場でも血生臭さがそれほど感じられない。このあっさり感をどう評価するかは、受け手によって違ってくるかもしれない。私には非常に新鮮に映った。その清々しい貢と対照的に演じられたのが玉也さんの万野。ネットリとした纏い付くような執拗さが、逆にコミカルに映った。玉也さんの解釈だろうけど、これもとても面白かった。

簑助さんがお紺で出られたのを見れたのは、これまたラッキーだった。何ヶ月か前に拝見した折より、お元気そう。82歳の高齢。でも彼の遣うお紺はしなやかで色っぽく、年齢を感じさせない。あのしっとり感は彼でなくては出せないもの。

2012年8月公演より、ずっと若返った演者の方々。エネルギーのボルテージがものすごく高かった。客席もそのときよりも明らかに若返っている。満員。前の記事にも書いたように、これを大夫床のすぐ前で観賞できたのは、幸運だった。