yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ナショナ・シアター・ライヴ『人と超人』(National Theatre Live Man and Superman by Bernard Shaw)@TOHOシネマズ 西宮OS 7月2日

ナショナ・シアター・ライヴの公式サイトでは、絶賛レヴィユーが満載。でも、やっぱり長い。長すぎる。地獄の幕では居眠りしてしまった。挑戦したい方はどうぞ。以下日本の公式サイトからの概説。

上映時間:約3時間50分/ 作:ジョージ・バーナード・ショー/ 演出:サイモン・ゴドウィン/ 主演:レイフ・ファインズ

独身貴族であることを公言する革新的な考え方のジャックは、実は自分も好きかもしれない幼馴染のアンから突然結婚をほのめかされて動揺し、その現実から逃避行へ。向かった先でギャングに誘拐されたジャックは、その誘拐犯と意気投合。さて、ジャックは自分の気持ちと、どう折り合いをつけるのか?!・・・。本作でまさに超人的な名演技をみせ、批評家から絶賛を受けたレイフ・ファインズの演技は一見の価値あり。

以下、英語サイトから採集した主要キャスト。

Ralph Fiennes as John Tanner / Don Juan
Indira Varma as Ann Whitefield / Ana
Ferdinand Kingsley as Octavius Robinson
Nicholas le Prevost as Roebuck Ramsden
Tim McMullanas Mendoza / The Devil

全編諧謔、皮肉、サタイア、ブラック・ユーモアの応酬で終始。特に主人公のジャックとアンとの丁々発止の掛け合いがすごい。いかにもバーナード・ショー。イギリスの芝居は大なり小なりこれがつきもの。外国人にはすこぶる解りづらい。その中でもショーはトップクラス(?)だと思う。以前にボストン/ケンブリッジのBrattle TheatreでMajor Barbaraを見た折にも置いてきぼりを食らった記憶がある。Robert Brustein 演出の素晴らしいプロダクションでしたけどね。とにかく言葉の洪水。呑み込まれ、溺れてしまう。このシリーズの字幕翻訳者に同情する。

舞台の設定も過激。なんでグラナダなの、地獄なの?おまけに当時の、つまり世紀末から20世紀初頭の政治情勢をふんだんに盛り込んでいる。彼自身がアイルランド出身、しかも社会主義者であったこともあり、いわゆる英国の貴族趣味に強烈な皮肉を飛ばしている。政治にのみならず社会一般の情勢にも広く、深く関わっていたというのが、この芝居一つを取っても嫌という程わかる。つまり部外者には理解するのがかなり困難であるということ。

「超人」は当然ながらニーチェの「Übermensch」を連想させ、ショーが哲学にも造詣が深かったことを思わせる。

バックにはモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』が流れているのもおかしい。もちろんジャックがそれだというわけなんだろうけど、実像はおよそかけ離れたもの。口は達者だけど、行動はからきしダメで、到底アンの雄弁に歯が立たない。ドンジュアン(ドンファン)には程遠い。

あまりに絶賛するレビューばかりなので、以下にいささかクリティカルな批評を。「Time Out」からのもの。

In terms of presenting ‘Man and Superman’ as a big, mad, zippy romcom, Godwin and Fiennes have pretty much done the best job imaginable. But even with Tanner’s more icky Nietzschean utterances edited out (it's a 'mere' three-and-a-half hours long), even with Fiennes’s likeably hangdog spin on the lead, and even with Shaw’s frequent suggestion that we’re not meant to take his hero particularly seriously… even with all that, it’s hard to get away from the fact that much of ‘Man and Superman’ is dense, flailing, borderline misogynist ranting that'll bore you to tears or drive you to distraction.

始まったのが午後6時半、終わったのが10時20分。疲れた!というのが一番の感想。オペラなみの長丁場。ナショナ・シアターは四つ劇場を擁しているけど、その中のLyttelton Theatre での公演録画。去年11月にナショナ・シアターで芝居を見たけれど、それはDorfman Theatreでのものだった。あと、Oliver Theatre、Temporary Theatre(今閉じている)とある。テムズ川沿いの一区画全てが芸術センターで、このナショナ・シアター群とロイヤル・フェスティバルホールが肩を並べて威容を誇っている。

この「ナショナ・シアター・ライヴ」、2014年からスタートしていたらしい。全く知らずにいたことにほぞを噛んでいる。これって、あのMETのライブビューイングの向こうを張ったものなんでしょうか。あちらはオペラですけれど。客席に日本人?と思しき人が2名ほど。今までウェストエンドを含むロンドンの芝居小屋で日本人に出くわすことはほとんどなかったので(有名ミュージカルは別だろうけど)驚いた。「ナショナ・シアター・ライヴ」効果かも。今知ってほぞを噛んでいるのが、ベネディクト・カンバーバッチの『ハムレット」、すでに東京と神戸で上演が終わっていること。7月3日に神戸の朝日ホールで上映されたとのこと。見逃して無念!これ、このブログ記事にもしていたのに。