yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『極楽長屋』市川おもちゃ劇団@京橋羅い舞座6月20日夜の部

芝居はさすがだった!おもちゃ座長は定石通りの手堅い演技。これぞ大衆演劇の伝統芝居と唸らされた。いわばお手本。それに、今月ゲストの要正大さんが素晴らしい。自然なんだけど色気のある演技。彼と掛け合い漫才のような相方をされた颯天蓮(そうまれん)さんもお綺麗な上にあっさり目の芝居がいい。また、女方役者役をされた望大地さんのキャラ立ちした演技もいい。この日のゲスト、新川劇団の新川博也座長もコミカルな演技が際立っている。彼の十八番ですものね。いろんなバックグラウンドの方たちが混在することで、混乱するのではなく、面白い化学変化が起きていた。それを目撃できたのがうれしい。

おもちゃ劇団をおもちゃ劇団として見るのはホントに久しぶり。2009年に大衆演劇を見始めた頃に鈴成座で見て以来かも。その時とは大幅にメンバー入れ替えがあったよう。おもちゃ座長と恵子大夫元以外では三好かずやさん、市川久美子さんのみが元のまま。他の方々は後からの方。名前を他ブログ情報から何んとか仕入れた。間違っていたら何卒ご容赦下さい。博也座長を見るのも5年ぶり。ひところお芝居の上手さにはまり、新川劇団が関西に乗った折には毎月のように見ていたっけ。懐かしかった。

今月、新開地に乗っている劇団、それと高槻千鳥劇場に乗っている劇団を見た。それぞれ以前には高く評価していた劇団だったけど、失望した。中核の役者さんが抜ける等、座員の入れ替わりが原因の一つ。また、最近(といってもここ数年の間に)座長になった人の演技が「座長」の名に位負けする下手さ。自分のパワー不足を棚に上げ、客に拍手を強要する新米座長。あるいはガサツな演技とやたらと大きな声をはりあげるのにうんざりさせられる座長。ブログで褒める人がいるけど、見る目がないんでしょうね。観客を「舐めているのか」と思うような馴れ合いの舞台にがっくり。もう二度と行くことはない。歌舞伎ではいろんな家が「合同」で舞台を創りあげる。「他家」とのぶつかり合いがイヤでも起きる。そこに新しい工夫、新演出も生まれでる余地がある。最近の歌舞伎の特に若手の隆盛を見ると、それがうまく作用しているのは明らか。

そういう切磋琢磨を大衆演劇に期待するのは無理なのかもしれない。というわけで、最近、「たつみ演劇BOX」と「劇団花吹雪」以外は見る気がしない。これらの劇団、お芝居にがっかりすることがない。新しい趣向を躊躇なく採り入れ、あくまでも前向きに、真摯に芝居と向き合っている劇団。他劇団とは一線を画している。何よりも品格が違う。残念なことに二劇団ともに関西を離れている。いずれも当地の方たちをうならせているはず。昨日は小泉たつみさんが23日ゲストで京橋に来られるということで、座席予約に行った。良席ではないけど、前から8列目が確保できた。

おもちゃ座長、恵子大夫元がお上手なのは誰しもが認めているところ。とはいえ、かって脇を固めていた方たちがあらかた抜けてしまったので、舞台は大変だと思う。でもこの日、要正大さん、望大地さん、颯天連さんの新メンバー(?)の丁々発止の言葉のやり取りに感心した。みなさん「大人」なんですよ。芝居をしているという意識が明確にある人たち。大衆演劇の役者では「まれ派」。お芝居『極楽長屋』を以下に。

おそらく落語ネタ?オチがきちんと付いていた。

大工の義一(新川博也)が主人公。父親が盗賊の一味でお縄になり、現在島流し中。そんなこんなで、義一は大工にも嫌気がさし、世を拗ねている。日頃何かと彼のことを気にかけていてくれる、同心の岡田(おもちゃ)が長屋を世話してくれた。ところがやってくると部屋にはすでに先住人が。この二人(要正大、颯天連)のかけあい、楽しい。義一はこの二人の騒がしいやり取りに、ゆっくり寝ることもできない。そこに長屋の住人の娘がやってくる。義一の顔を見るなり、「一緒になって、嫁にして」を連呼。やっとのことで追い返したら、今度は女方役者の小梅太夫(望大地)がやってくる。この方、背も高く、恰幅も良い。もちろんオモシロメイク。義一に迫る、迫る。着物を脱いで、赤襦袢姿で迫るのがおかしい。

大家(かずや)と義一に下宿を世話した同心の岡田がやってくる。下宿は一人のはずなのになぜ先住者がいるのかと、紹介した岡田に抗議する義一。ところが、大家にも岡田にも小梅太夫にも幽霊は見えていないよう。と、この先住者たち、いつの間にか幽霊の三角頭巾を頭に付けている。

大家たちが帰った後、義一は幽霊二人に押し込み強盗をする計画だと打ち明け協力を仰ぐ。幽霊の一人、鬼太郎(!)は反対するが、真面目に働くことに嫌気のさした義一は耳を貸さない。どうせ父親も盗賊で捕まり、島流しになっている。自分は父親のような盗賊にでなく、鼠小僧のような義賊になってやるんだと息巻く。

二人は土地の裕福な旅籠に押し込みをかける。ところがそこにはすでに岡田とその配下(?)が。暗闇の中で義一と鬼太郎、それに岡田とその配下が手探りで探り合う。ここ大衆演劇定番の場面だけど、やっぱりおかしい。正大さん、何度も岡田配下の同心を持っっていた小道具(あれ、なんていうんでしたっけ?)で何度も配下の頭を叩く。これがめっぽうおかしい。灯りが点けられ、義一の顔が明らかに。義一を取り押さえる岡田。

お縄になった義一は自分の長屋に連れてこられている。すぐに番屋にしょっ引けと言い募る義一。どっちにしても盗賊の子であるという自身の汚名を晴らすことはできないのだと開き直る。説教する岡田。義一の父、義助から義一のことを頼まれいたという。昔は盗賊の一味だった大工の義助はお吉と一緒になったのを機に足を洗っていた。それを助けてくれたのが盗賊頭の「狐火の勇五郎」だった。

お吉亡きあと、義助は男手一つで義一を育てた。ところが新しく盗賊頭になった二代目の勇五郎に脅され、仕方なく押し込み強盗を手伝うことに。でもその際、頭にはわからないよう、証拠を残しておいた。おかげで一味はことごとくお縄に。もちろん義助もこの話自体、どこかで聞いたような話。池波正太郎の「鬼平」でおなじみのパターンですよ!

義助は島流しにされる前、岡田にくれぐれもと義一のことを頼んで行った。義一が悪心を起こし、盗みを働くようなことにならないよう防いでほしいと。それを引き受けた岡田。ここで明るみに出たのは、幽霊二人を始め、大家、小梅太夫、旅籠の女将、すべてが昔義助に助けられたことのある人たち。彼らが芝居を打って、義一が悪行に走るのを止めたのだと。親の恩を知る義一。

となると、お決まりの大団円、のはずが、ちょっと違っていたんですよね。「義賊なんてのも、所詮は悪い奴」っていう鬼太郎のセリフ。所詮、「義」なんてないってことでしょう?このひねり、いいですね。予想に反して、極めてモダンな造りの芝居。

最後は一応全員で「立派な男になって花咲かせる。目指すところは日本一だ!」なんて決めセリフで締められるんですけどね。このド大衆演劇の決めセリフを思い入れなしに言ってみせるところ、この日の役者さん、特に鬼太郎役の要正大さんが素晴らしい。帰りの電車の中で検索をかけたら、昨年5月まで劇団紫吹におられたとか。若葉しげるさんの薫陶を受けられたと読んで、なるほどと思った。

<舞踊ショー>
第一部の舞踊ショーは遅刻したため見ていない。

第三部舞踊ショー
曲名等、誤りあればご容赦。

群舞  「雪月花」

大地  立ち 「桜の紋章」
水色の紗の羽織が綺麗。感じが尾上松也に似ておられる。

正大 立ち 「貝殻節」
上手い!

博也 女形  「千本桜」
黒字に花模様の着物に ゴールド帯で。御殿巻(?)の鬘。顔が小さく足が長いという体型を活かしての舞踊。博也さんは女形がステキ。

おもちゃ  女形  「港子守歌」
着物も水色、帯も水色の格子模様。着物だけでなく、踊りも品がいい。芝居の時の侍役からの変身ぶりがすごい。

歌  どなたか分かりません。
群舞付き。

颯天連 立ち  「恋人も濡れる街角」
お芝居では男役だったのだけど、踊りでも立ち。とにかく、すっきり爽やかな美人さん。立ちにはぞくっとする色気が。さっと裾をめくった時に見える黒裏地。実に色っぽい。。女性の立ち舞踊でここまでの色気を出せるのはすごい。私的にこの日のナンバーワン。

三好かずや  「山陽道」
以前より少しふっくらされたような。すっきりと品がいい。

小恵子 立ち 「運命の人」
こんなうまい子役は初めて。ちょっと引くくらい、うまい。

恵子・おもちゃ  「お島千太郎」
決まっているのは言わずもがな。先月、今月と見た劇団悠さんの悠座長と春樹さんの「お島千太郎」と思わず比べてしまった。タイプは違っていても、どちらも素敵でした。

正大 女形  「純情花吹雪」
色っぽい。贔屓と思われる方々の黄色い歓声が。全体的に年齢高めの観客が多い中で、華やいでいました。

博也 立ち 「地上の星」
衣装が洋服調でとてもモダン。彼のスタイルのよさが際立たされていた。

ラスト 
中座したので、控えず。