yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

フィッシャー=ディスカウの『冬の旅』

ニーチェを読むのにやっぱりドイツ語は必須。昨日花火をご一緒したもと同僚の哲学の先生からドイツ語速習用のとてもよい教科書があると伺ったので、入手してどこまでできるか試してみる。でも「効率主義者」なので、もっと楽に楽しく習得できる方法があるんじゃないかと色々考えた。グリム童話は難しそうだし、ましてや文学作品なんて手も足もでないだろう。で、ドイツ・リートを思いついた。シューベルト(詩はミュラー)の『冬の旅』と『美しき水車小屋の娘』を「攻略」しようかと考えている。

CDもいろいろ出ているけれど、やっぱりフィッシャー=ディスカウ!2年前に鬼籍に入っている。彼はことばのひとつひとつをクリアに丁寧に発音、学習以前に聞き惚れてしまう。ジェラルド・ムア伴奏のものが手許にあるけど、youtubeをみてみるとポリーニが伴奏しているものが出てきた。ちょっと考えられない組み合わせ。ポリーニは独奏者として文字通り世界トップの人だから。でも聞いてみると、これが絶妙の組み合わせ。天才と天才との競演。その場にいた人はさぞ感激しただろう。youtubeのサイトをリンクしておく。「1978年のザルツブルク音楽祭でたった一度だけ実現させた『冬の旅』」だそうである。去年やっとCDでリリースされた。amazonでも購入できる。そのレビュ―のひとつ、(La doice Vita)さんという方の評があますところなくこの共演のすばらしさを伝えているので、以下に引用さてていただく。

両者の緊張感に満ちたスリリングで硬質な『冬の旅』を聴けるのがこのライヴの特徴だ。この2人にとっては『美しき水車小屋の乙女』のような甘美で、哀愁を湛える曲集よりも遥かに適した選曲だったと思われる。その意味でもこの協演の音楽的な面白みは尽きない。フィッシャー=ディースカウにしてもポリーニにしてもお互いに譲れない一線があり、そのぎりぎりのところで2人のせめぎ合いと合意があって成立しているような演奏だが、決して歌手と伴奏者が勝手気ままに楽譜を辿ったのではなく、合わせなければならない部分では完全な意気投合が感じられ、シューベルト晩年の慟哭が聞こえてくるような表現を成り立たせているのが素晴らしい。ベテラン、フィッシャー=ディースカウの自由闊達で老練な歌唱もいつになくエキサイティングな雰囲気があり、これまでのセッションでは聴くことができなかったもうひとつの世界が開かれたかのようだ。

一方ポリーニはムーアのようにどこまでもぴったり寄り添って歌手の長所を引き出すというタイプではなく、ある部分では先導し、挑発し、また別の部分では付き従って行くという絶妙な関係を保ちながら、ピアニスティックな音響を響かせる部分では、冷徹で内省的でありながらかつて誰も到達したことがないようなスケールの大きな伴奏を披露している。幅広いダイナミズムを駆使しつつ、一切の小細工を避けて真摯に真正面から曲と向き合った孤高の表現は、シューベルトの歌曲伴奏の新しい可能性をポリーニがたった一晩のコンサートで試みた例外的なサンプルと言えないだろうか。

確かにポリーニには今もって伴奏はおろかアンサンブルの経験が殆んどない。ライヴ、セッションを通じてもこの『冬の旅』と、イタリア弦楽四重奏団とのブラームスのピアノ五重奏曲があるのみだ。それだけにこうしたのっぴきならない緊張感が醸し出されているのだろう。だからと言って彼がドイツ・リート界の巨匠の前に遠慮したり萎縮している様子は全くなく、対等に対峙してひとつひとつの歌曲を入念に仕上げているところに若き日のポリーニらしさがある。彼らのセッション録音が実現しなかったのは、ある意味で当然のことだったのかも知れない。もしこの2人がセッションに臨んだとしても、お互いが完璧な演奏を残したいがために芸術的な接点を見出せなかったかも知れないからだ。むしろ一期一会のライヴだったために可能になった協演という印象を受ける演奏だ。

CDをiPhoneにダウンロードし、歌詞は一応最初の2曲のみを英語に訳して、これもiPhoneのevernoteに貼付けた。これで音声を聞きながら目で歌詞を歌う練習をすれば、ドイツ語に慣れて行くかもしれないと期待している。

大阪のゲーテ・インスティトゥートが8月いっぱい、一番基礎の集中コースを実施しているので行くつもりだったのだが、きっと学生が多いだろうから、こちらは分が悪い。へたれの私はきっと挫折するだろう。それにデイトレの実践をしなくては、せっかく受けて来た研修がムダになる。ゲーテでは9月にも同様ドイツ語集中コースがあり、こちらは午後6時からのコースなので、そちらに申し込むつもり。そのあと、10月から2月までの週2のコースに入ろうかと考えている。来年のドイツ行きにはなんとか間に合うかも。