yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

ラモン・オルテガ・ケロ オーボエ・リサイタル@兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール@7月6日

プログラム曲目は以下。

サン=サーンス:オーボエ・ソナタニ長調op. 166

シュンケ:アンダンテとボレロ

プーランク:オーボエ・ソナタ FP185

シューマン:幻想小曲集 op. 73

ファリャ:恋は魔術師

ボルヌ:カルメン幻想曲

予定はgoogleカレンダーには入れてはいたのだが、チケットを取ったのは5ヶ月ほども以前だったので「演奏者がどんな人なのか」といった情報は忘れていた。行ってみて、初めて「若手で将来を嘱望されている演奏者」というのに惹かれてだったことを思いだした。そしてそれは裏切られなかった。

サン=サーンス:オーボエ・ソナタのイントロ部分を聴いた瞬間に、この弾き手の力量が分かった。滑らかで、嫋々としていて、何よりも甘かった。この人の資質が余すことなく出ていた。サン=サーンスの曲質ともぴったりマッチしていた。

シュンケは(ネットで当たると)23歳で夭逝した作曲家だったそうである。ドイツ生まれで、フランスで勉強したあとドイツに戻り、シューマンとも親交を結んだとのこと。あらかじめこういうことを知っていれば、鑑賞がもう少し深まったのにと、残念。アンダンテ部とボレロ部のメリハリの付け方が「若々し」かった。ラモン・オルテガ・ケロ自身の年齢(25歳?)が作曲家の年齢に近いので、彼の思い入れが入っていたような気がする。曲調はドイツ的というより、どちらかというとサン=サーンスに近かった。

プーランクの「オーボエ・ソナタ」はまるで語りかけるような表情のつけかたがすばらしかった。弾き手の繊細な心持ちと、それを(おしつけがましくなく)聴き手に伝えようとするその呼吸が合っていた。芸文センターの観客の反応もまさに阿吽の呼吸。弾き手に相応しい聴き手。

シューマンのこの「幻想小曲集」は初めて聴いた。ピアノの「幻想小曲集」とは聴いた感じが違っていた。ダイナミック度が高く、その分繊細度が低くなっている。この曲はもともと「クラリネットとピアノのための室内楽曲」ということなので、そう聞こえるのかも。ピアノはリヒテルのもの(ピアノの「幻想小曲集」の最高傑作だと思う)を持っているので、どうしても比較してしまう。

ファリャ、「恋は魔術師」は多分この演奏者がこの日のプログラムでもっとも好きな曲だったのでは。楽しげに生き生きとした演奏で、それは聴き手にも感染した。スペイン人演奏家がスペイン人作曲家の作品を演奏するということが、どういうことなのかがよく伝わってきた。

最後のボルヌ、「カルメン幻想曲」はビゼーの『カルメン』をアレンジしたもの。おなじみの旋律がでてくる。フルート等の練習曲としてもよく使われるということもあるだろうけど、とても親しみやすかった。

以下が演奏者と伴奏者の写真と「来歴」。サイトから拝借した。

ラモン・オルテガ・ケロ Ramón Ortega Quero - Oboe

1988年スペイン生まれ。グレゴール・ウィットに師事。2007年、難関のARDミュンヘン国際コンクールで優勝。61年のハインツ・ホリガー、67年のモーリス・ブルグ以来、40年ぶり史上3人目の優勝者となり、世界的な注目を集める。これまでに、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、ライプツィヒMDR交響楽団、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、バーゼル交響楽団、チューリッヒ室内管弦楽団、ウィーン室内管弦楽団、ミュンヘン室内管弦楽団、サンパウロ交響楽団等と共演し、ルツェルン音楽祭、ラインガウ音楽祭等の主要音楽祭にも出演している。08年春より、首席指揮者ヤンソンスのもとバイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者に就任。これまでにムーティ、ブロムシュテット、コリン・デイヴィス、ガーディナー、バレンボイム、アーノンクール、ハイティンク等、世界的な指揮者と協同で音楽活動を行っている。これまでにリリースしたCDは、二度もエコー・クラシック賞を受賞し、録音の分野でも注目を集めている。

アニカ・トロイトラー Annika Treutler - Piano

ドイツ生まれ。マレイ・ペライア、エリザーベト・レオンスカヤ等に師事。これまでにベルリン・ドイツ交響楽団、ベルリン放送交響楽団、ポーランド室内管弦楽団、プラハ放送交響楽団などと共演。メクレンブルク・フォアポンメルン音楽祭をはじめとする音楽祭に数多く出演しており、2011年よりゾマークラング音楽祭の芸術監督を務めている。また、ミュンヘンの若いピアニストのための国際コンクールで入賞、グリーグ国際ピアノ・コンクールで第2位(1位なし)と聴衆賞を受賞するなど、国内外のコンクールでもその名を上げている。

ラモン・オルテガ・ケロの天才振りはよくわかったけど、伴奏者のアニカ・トロイトラーも逸材だった。美人。写真よりもっとおきれい。あくまでも主演奏者によりそい、それでいて弱く頼りない感じはまったくなかった。彼女のピアノにも聞き惚れた。

この日の聴衆も先ほど書いたように、パーフェクト。私の隣席の年配男性など、本当に感動しておられたのが、ひしひしと伝わってきた。ピアノを弾く人らしく、手が「伴奏」していた。幕間に買ったCDのパッケージを一生懸命開けようとしておられたのも、微笑ましかった。きっとサインをもらうおつもりだったのだろう。

私は前日に行ったシネマ歌舞伎、『天守物語』の上映中不覚にも爆睡してしまい、途中からまったく意識がなくなっていたので、この日も心配していたのだけど、幸いなんとか「もった」。やっぱり「生」は違うんですよね。

この小ホール、すり鉢形で一番底がステージという造り。四方にまんべんなく音が行き渡るので、どの席からも最高の音が聞ける仕組み。以前に二度ばかり来ていて、その都度感心した。私の中・高の母校の名前が冠されているのもうれしい。