yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

三代猿之助四十八撰の内「太閤三番叟」@尼崎アルカイックホール6月19日

松竹大歌舞伎の巡業「中央コース」の一環。前日は彦根、20日は八尾、21日は岸和田の浪切ホールと、ほぼ毎日移動。大変である。アルカイックホールはずっと前に三代目鴈治郎(現坂田藤十郎)が「近松座」としてやった『封印切』を見に来たことがあるのみ。設備の点からは神戸文化ホールとどっこいどっこいで、とにかく古い。とくに「花道」がいけない。浪切ホールにしておけばよかったと後悔。

この巡業、猿之助、中車の襲名興行を兼ねている。この「三番叟」のあと「口上」、そして『一本刀土俵入』へと続く。

以下松竹サイトからの引用。

大坂城を築いた太閤秀吉は、その完成を祝い、自ら三番叟を舞うことになった。正室の北政所が翁を、側室の淀の方が千歳を厳かに舞う中、金の剣先烏帽子をつけた秀吉の三番叟が賑やかに舞い始める。そこへ柴田勝家の残党が秀吉の命を奪おうと襲いかかるのだが…。
 
「猿之助四十八撰」の中のこの作品は、昭和56年に東京の明治座にて三代目猿之助によって初演されました。秀吉が三番叟を舞うという設定で、厳かな中に立廻りを採り入れた華やかな舞をご覧いただきます。

6月に「三番叟」がみれるなんて、ちょっとした感動。歌舞伎の三番叟をみるのは多分初めて。大坂城を築いた太閤秀吉が築城を祝して自ら三番叟を舞うという趣向らしい。

プレリュードのあと、まず登場したのは千歳をつとめる淀の方(笑三郎)。淀の方は古式ゆかしい髪形で手には鈴を載せた三宝を持っている。彼女はしとやかに舞う。そこに武家の奥方然とした髪形・衣裳の北政所(笑也)が登場、舞を舞う。それをにこやかに見守る淀の方。一方の政所の表情はいささかこわばっている。笑也のこの表情、上手い。

笑三郎には2012年南座での『滝の白糸』のお辰役で感心したし、同じ年の三越劇場での『葛西橋』の演技も手練でよかった。先日の『空ヲ刻ム者』の菖蒲役も他の役者を圧する存在感だった。菖蒲のときは私の席のすぐ前のスッポンから登場したのだけど、横顔の気品の良さが印象に残っている。今回の淀の方も優雅で気品に溢れていた。同年輩の女形の中では群を抜いて美しい。

終始にこやかだった笑三郎に比べると笑也はほとんど笑わなかった。どちらかというと不機嫌そうだった。番付で北政所役だったと判り、納得。

二人が袖に退場した後、いよいよ真打ちの赤い狩衣に金の烏帽子姿の太閤(右近)が登場、舞納める。この人が出て来ると、なにかエネルギ―が舞台に充溢する感じがする。太閤の貫禄、器量に相応しい重厚かつ華麗な舞を披露。最後は毛氈敷きの台にのって満開の桜を背景に見得をきる。「関扉」の終幕を思いだしてしまった。ということは、太閤の「本質」がそこに暗示されているということ?

華やかかつ豪快な舞で、太閤の人となりとともに、築城の喜びと誇りをよく表していた。

また松竹サイトにあるように、「立ち回り」が入っていたのは歌舞伎ではめずらしい。とはいえ、大衆演劇などの殺陣をみていると、お子様芸ですけどね。