yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『春雨新五郎』たつみ演劇BOX @新開地劇場2012年9月24日

「たつみ演劇BOX」の芝居には外れがほとんどありません。なににもまして歌舞伎にきわめて親近性のある古典劇を毎回舞台に乗せることのできるのは、数多ある旅芝居劇団の中では「たつみ演劇BOX」とあと2劇団ほどにすぎません。古典劇と私がいうのは九州系の昔ながらの「ヤクザ路線」を指すのではありません。もっと洗練されたものです。目利きの観客に鍛えられ、時間の経過の中でより洗練され形をととのえてきたものをあえて「古典」と呼ばせていただきます。芝居の技巧をあまねく駆使し、ときしては歌舞伎芝居をも凌ぐほどの洗練、ソフィスティケーションを獲得している、そういう芝居のことを意味しています。

今月は新開地劇場にかかっているのですが、これは神戸の人たちには幸運です。実は2年前にも「たつみ演劇BOX」は新開地に乗りました。その折には20日近く通ったのですが、その後は関西方面にはあまり乗ることがなく、今回は実に2年ぶりの新開地劇場公演です。2年前にもすばらしい劇団だとは思いましたが、今回はそれ以上の感銘を受けました。以前も失望することがなかったのですが、今月の芝居はどれもがそれを凌駕していました。初めてみたものも多く、おそらく2年前の演目とは意識的に替えておられるのでしょう。こういうさりげないところに、たつみ座長の心意気を感じます。

(素顔も)オトコマエで上品な兄弟座長のお二人です。オトコマエ度はおそらく劇界ナンバーワンでしょう。だれがみても文句なしの男前(当世流の「イケメン」ではありません、念のため)ということで。今どきのへちゃむくれのそのへんにごろごろいるような「イケメン」タレントとは一線を画しています。真にオトコマエなのです。兄弟そろってというのが、スゴイ!そしてなによりも芝居も舞踊も上手い!!お二人をみている私の顔をどなたかがご覧になれば、あまりの腑抜け顔にあきれ果てるに違いないでしょうね。だいたいがしまりなくにやけてみていますから。

そしてお二人のお姉さまの小龍さんがこれまたすごい!演技力ではこの実力派のお二人に負けていません。十分に張り合っておられます。それに江戸前芸者の気風のよさを完璧に演じられます。

この三人が中心になっての舞台なのですから、がっかりすることはまずないと保証できます。

で、今日のお芝居ですが、全編歌舞伎調でした。たつみさんの口上のお話では彼のお祖父様が創られた芝居だとかで、ほぼ元通りに演じられたとのことでした。歌舞伎、それも歌舞伎十八番を彷彿させるような七五調の台詞がこれでもか、これでもかと続きます。口調がよいので観客はWelcomeでしょうが、役者にすればややこしい前近代的台詞をおぼえなくてはならず、とても大変だとは察せられます。でも恐るべしこの兄弟!たつみさん、ダイヤさん、小龍さん、そして瞳太郎さんもパーフェクトでした。

芝居のプロットを書くつもりでしたが、やめておきます。全体としては『花笠文治』にきわめて近い狂言でした。タイトルの「春雨」は当然のことながら「月形半平太」を模しています。最後に春雨に濡れる主人公とその妻が舞台の中心に持ってこられるのが、アリュージョンとして有効になっています。とはいうものの、今の観客で(いくら年齢層が高いとはいえ)どれほどの人がそのアリュージョンに気づくのかと、いささか危惧はしますが。

舞踊ショーも当然ながらすばらしかった。たつみ演劇BOXの着物のセンスはピカイチです。とにかく上品で美しい!その繊細かつ優美な着物を着こなせるのは、おそらくこの二人をおいてないでしょう。二人が曲のテーマに合った着物姿で登場すると、一瞬場がしーんとなります。

こういうスゴイ舞台、観客動員があまりできていないのがとても残念です。神戸の人は見る目がないのでしょうか。千秋楽まで残り少なくなりました。来月は奈良の弁天座、再来月は桃谷の明生座ですが、阪神間ではこの機会を逃すとなかなか出逢う機会がないと思います。

たつみさんが口上で言及された今後の予定です。お断りしておきますが、不正確かもしれません。

千秋楽までのお芝居予定
25日 『高崎情話』
26日 『おしどり道中』 夜の部は貸し切りなので一般席はありません。
27日 『上州?』
28日 『稲荷札』

来年までの公演予定
10月  弁天座
11月  明生座
12月  お休み

2013年
1月  博多新劇座
2月  佐賀龍登園
3月  大分ヤング劇場
4月  中国地方のどこか