yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

オフ・オフ・ブロードウェイでの『沓掛時次郎』上演

どういうグループがこれを演じているのかネットで検索をかけた。映画になったのは知っていたが、歌舞伎にもなっていた。そして一番驚いたのが去年11月10日から27日にかけてニューヨークのオフ・オフ・ブロードウェイでこれが上演されたという情報だった!劇場はFlea Theater で、ここは以前芝居をみに行ったことがあるが、かなりヤバイ地域にある。当時NY市はジュリアーニ市長の尽力で以前より治安が良くなっていたとはいえ、やはり夜はかなり注意が必要だった。今はどうなんだろう。あまり変わっていない気がするけれど。それでもこのいかにも大衆演劇的作品がNYの舞台に上がったこと自体が、すごいことである。それがオフ・オフであっても。全世界の演劇人がNYを目指しているのだから。

劇評がいくつかの演劇誌に掲載されたようで、これもすごいことである。その前にこの芝居の上演を紹介するサイトの紹介文を以下に引用する。

みなさん、「沓掛時次郎」をご存知ですか?昭和の始めに書かれた時代劇で、これまでに映画を始め、テレビドラマやコミックにもなっているんですがそんな「沓掛時次郎」が、新しい形となってニューヨークの舞台に登場しました。

先週日曜日からニューヨークのオフオフ・ブロードウェーの劇場で上演が始まった時代劇「沓掛時次郎」。1928年に書かれた原作を現代風にアレンジしたこの舞台は、ダンスあり、笑いありの新しい舞台なんです。ヤクザ同士の縄張り争いが激しい時代。

その抗争に巻き込まれた元ヤクザで旅人の時次郎は、旅路で世話になったお礼にヤクザの三蔵を刺し殺します。三蔵の妻と子供を狙う他のヤクザから二人を助けるため、時次郎は二人を連れて逃亡を決意します。作家・長谷川伸が書いたこの原作はこれまでに8回映画化され、初代中村錦之助や市川雷蔵などが演じてきました。

そんな「沓掛時次郎」をアメリカで上演するに当たり、今回の舞台では時代劇の枠を超えて様々なアレンジがされています。席がおよそ40席と小さいながらも、すぐ目の前で役者が演じていて臨場感が漂う舞台です。

このサイトで、劇評も紹介されていた。以下にその一覧をお借りしておく。。

nytheatre.com
Back Stage
EXEUNT Magazine
SHOW BUSINESS
Theater Scene.net
examiner.com
Joe's View
BABBLE360
New York Theatre Review
Shukan NY Seikatsu(週刊NY生活)

それぞれの劇評に舞台写真が掲載されていた。お借りしておく。


一見して分るとおり時代の衣装ではなく、現代の服である。演出もそれに合わせていて、もし以前に日本で大衆演劇版のこの芝居をみたことがあれば、かなりの確率で失望してに違いない。だから、この芝居をオリジナリティに拘ってみてはいけなのだろう。長谷川伸の原作を生かしつつ、そこに大幅なアダプテーションを加えている。

上の劇評のほとんどを読んでみたが、おおむね好意的な批評となっていた。また、日本語での上演だが、英語字幕がついたようである。もっとも上の劇評をした一人は、「字幕がなくても舞台でなにが起きているのかは、よく分かった」というコメントを書いている。

私が一番納得した劇評はBack Stage のものだった。非常に的確にやくざ世界の義理の説明をしていたのが親切である。

写真で見る限り、役者たちは小劇場的な身体の人たちである。長谷川伸をどれほど受肉化したかは、かなり心もとない。こういうところこそ大衆演劇の役者さんたちの出番である。彼らが海外の劇場で芝居を演じれば、間違いなくヒットすると思う。今後もどれほど日本の演劇が演劇メッカのNY や欧米の大都市で受け入れられるのか、注視して行きたい。