yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『悪太郎』in 九月大歌舞伎@松竹座9月22日

同タイトルの「狂言」をもとにした歌舞伎なので、いわゆる「松羽目物」の約束を踏まえたものになっている。でもそこは歌舞伎、一般受けするような工夫が随所に凝らされている。もとの狂言も喜劇ではあるけれど、この歌舞伎バージョンほどにははじけていない。

「猿翁十種」の一つになったというだけあって、猿翁の「人好きのする豪快さ」を十分に生かす演目になっていたという。たしかに、主人公の悪太郎は憎めない人好きのするおもしろいキャラクターで、こういうのを演じたら猿翁さんはさぞかしはまっていたのだろうと想像できる。右近さんがその悪太郎を演じられるのも、十分にその辺を踏まえてのことだろう。

そして右近さん、「猿翁もさぞかし」と思うほど、役に入り込んで演じていた。猿翁のはみたことがないので比較できないが、おそらく猿翁ほどの「荒削り」ではなく、もっとかわいげのある悪太郎だったのではないだろうか。それでも叔父やら通りがかかりの坊さんやらに無理難題をふっかけて困らせるやんちゃな若い男を、さもありなんと説得するだけの巧さで演じきっていた。こういう役、観客をひきつけて笑わせるツボをつくるのがけっこう難しいと思う。それをピタリとうまく、あっけないほどうまくやられた。この市川右近という役者、さすが猿之助の跡継ぎと納得させるだけの器量だった。