yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「N響アワー−樫本大進 登場!」eテレ

昨晩のNHK教育の放送だった。丁度バッハの「無伴奏バルティータ3番、プレリュード」の演奏に入る前で、演奏を聴き逃さずにすんだ。

最初の音を聴いた瞬間、逸材だとわかった。バッハにしては勁い音だった。でもバイオリンにありがちなキーンとした音ではなく、張りつめてはいるがどこか艶めいた音色だった。そして、なによりも若さからくるエネルギーが漲っていた。あり余るほどのわき上がるエネルギーを、目一杯出し切らず、抑制しながらの演奏だった。無伴奏パルティータは私の大好きな曲の一つだけれど、これは今まで聴いた中ではもっともまっすぐに清新な、そしてパワフルな演奏だった。

NHKのサイトにある紹介文では樫本大進さんを次のように紹介している。

2010年12月に、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに正式就任した樫本大進が登場。ソリストとして活躍していた樫本が、オーケストラを率いる立場になって感じた心境の変化とは? インタビューで、たっぷり聞く。指揮はN響初登場のスザンナ・マルッキ。現代音楽の旗手であるマルッキとの共演も、聴きどころだ。

ベルリンフィルのコンマスになるには試用期間が2年ばかりあるようだけれど、樫本大進さんはわずか1年3ヶ月のスピード就任だったそうである。とはいっても、彼はソリストとして活動して行くと思っていた人の方が多くてがっかりした人もいたようである。まだ32歳の若さ、おそらくは世界トップの交響楽団のコンマスとして経験を積んで、ソロ活動にも磨きをかけるに違いない。若いというのがでもなんともうれしい。前途洋々である。

番組ではこの後樫本さんへのインタビューがあった。これも彼のちょっと日本人離れした、それでいて純粋な人となりが分かるものだった。そのあと、上の紹介文にもあるようにスザンナ・マルッキさん指揮でラロの「スペイン交響曲 ニ短調 作品21」での彼のソロ演奏となった。これは先ほどのパルティータとは違って、彼の技巧、力のすべてはそのラテン調の旋律がかもしだすたっぷりと豊かな音を生み出すことに注がれていて、耳のそしてなんといっても心の保養になった。

ネットでおそまきながら樫本大進さんについて調べたら、外国生まれの外国育ちだった。7歳でジュリアード音楽院のプレカレッジに入学、11歳でその才能を認められてドイツのリューベック音楽院で教鞭を執っていたザハール・ブロンに招かれリューベックに渡り、その後は数々の音楽祭で1位入賞という、輝かしい経歴の持ち主であることが分かった。これだとたしかにだれもがソリストとしての活動を期待するだろうと思った。

演奏会情報を調べたら、ほんとうに一足違いですでに日本でのコンサートは終わっていた。次のチャンスを待つしかない。ネット検索をしてみて、彼はすでに大いなる注目を日本のみならず世界のクラッシックファンから集めていたことが分かった。なんと迂闊だったことか。2007年に来日したおりの紹介文がステキだし、写真にもとべるので以下に載せておく。

http://www.philiahall.com/j/series/070304/img/image.jpg
第1回
樫本大進ヴァイオリン・リサイタル
[日時] : 2007年3月4日(日)15:00開演

2005年のリサイタル・ツアーでは、その研ぎ澄まされた集中力と息を呑む美しさで聴衆を圧倒、各誌から大絶賛を浴びた。 デビュー10周年、その演奏姿勢はもはや巨匠の風格とオーラさえも放つ大進が、国内では初めてとなる無伴奏リサイタルに挑む。孤高の世界を繰り広げ、真の巨匠へと歩みゆく姿は見逃せない。

この番組では、インタビューでの地の若さと、演奏しているときの巨匠の表情との対照がかなり際立っている印象を受けた。彼自身の言葉通り、コンマスの経験を積んできていることがソリストとしての彼を成長させ、演奏に深みを与えることになっているのかもしれない。