yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

NHK謹製『人形歴史スペクタル平家物語』

NHKで1993年から1995年にかけて放映された人形劇*1である。

吉川英治の『新・平家物語』を基本に、平清盛や源義経の足跡をたどったストーリーである。『新・平家物語』は1972年に放送された同名のNHK大河ドラマの原作にもなっており、本作はNHKでの2度目の映像化作品となる。『人形劇 三国志』同様、専門の声優に限らず実力派の俳優を多数キャスティングした事で子供番組とは思えない重厚なドラマを展開した。原作では長く描かれる壇ノ浦の合戦以降の物語が大幅に省略され『勧進帳』などのエピソードは描かれなかったが、清盛の青春時代から始まり老境の麻鳥夫婦の姿で終わるのは原作と同様で長大な物語の全体を収めた構成になっている。 視聴者から高い評価を受けながら再放送される機会はごく少なかったが、2006年になってCS放送の時代劇専門チャンネルで再放送され、NHKエンタープライズから五部構成のDVDボックスが発売された。

つれあいは人形劇には目がなくて、最近では『連続人形活劇 新・三銃士』*2をよく見ていた。私はこういう人形劇にはほとんど興味がないので、あまりつきあわないのだが、たまに仕方なくみることもある。子供向けとなっているが、大人の鑑賞にも耐えるよう、随所に工夫がなされていた。単純なプロット中心の流れではなく、人物の複雑な関係、またそれぞれの人物の屈折した心理等に深く踏み込んだ展開になっていて、さすがよい脚本家を抱えているNHKだなと思わせる。

吉川英治の原作、『新・平家物語』は読んだことがなく、ただそれを下敷きにした溝口健二の『新平家物語』は英語字幕入りのビデオテープをアメリカで買った。勤務先の留学生に見せるためである。ただこれは溝口の代表作とはいえないので、彼らには別のフィルムをみせた。『平家物語』に出てくる清盛像とこんなにも違っているのだと驚いた記憶がある。何しろ映画ではあの悪評高い清盛を市川雷蔵が演じているのだから、どうみてもヒーローになってしまう。

NHKの人形劇、川本喜八郎というすばらしい人形作家の手になるもので、リアルというか生々しいというか、文楽人形とはまったくちがった、むしろ西洋の人形をおもわせる人形だったが、清盛は(案の定というべきか)かなりむくつけき男として造形されていた。平家といえばなんといっても源氏とならんで武士の代表ですから。後にいくら「貴族化」したとはいえ、出自は護衛を任務とするたくましい男たちの武装集団なんですから、清盛が例外だったはずもないだろう。

原作を読んでいないのでそう言い切るのは早計かもしれないが、『宮本武蔵』の吉川英治らしく、人物の関係とそれにまつわるエピソードがドラマチックであり、同時にエピソードが他にエピソードとリンクして行くのが自然である。だから視聴者(読者)が人物とそれにまつわる事象を理解するのが容易である。「人物相関図」なんていう地図、道しるべがなくても、みているだけで自然に分かる仕組みになっている。これはもちろん「子供向け」だったということもあるのだろうが、原作のもつそういう「親切」さをより強く出そうというNHKスタッフの心意気でもあったように思う。今までになかったスペクタクルなかつ親しみやすい「人形劇」を創造するのだという、強い決意を感じる。

このDVDの第1巻中それがもっともよくあらわれていたのが、遠藤盛遠(のちの文覚)と袈裟御前とのエピソードだった。袈裟御前と文覚とのいきさつは「袈裟御前」のサイトに詳しい。

楽しかったのだが、"That's not my league"という観があり、今日は「口直し」(?)に文楽を国立文楽劇場に観に行くつもりだったのに、勤務先で採点やら成績つけをしていて気分が悪くなり、帰宅してしまった。なんとしても今週中に行くつもりである。公演は8日までだから。しかも今日サイトで源大夫さんが急病とあったので、みれる間にみなくてはと焦ってしまう。

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/人形歴史スペクタクル_平家物語

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/連続人形活劇_新・三銃士