yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

劇団花吹雪@朝日劇場 5月25日夜

今日は松竹座で「團菊祭」の昼公演を観てそのまま新世界に移動、花吹雪を観てきました。歌舞伎については次稿にして、以下花吹雪の今日の公演についてのレポです。

お芝居は『若様侍』。これは今までにみたことのないものでした。今月の花吹雪、去年11月の新開地公演で演らなかったものが多いようです。これはとてもありがたい!もちろん同じ芝居を今度はどう演じるのだろうかという通の楽しみ方はあるのでしょうが、目新しいお芝居の魅力には勝てません。

旅芝居ではよくかかるお芝居とのことでしたが、たしかにどこかで観た記憶があります。

船着き場で舟を逃したところから知り合いになったやくざ者の秋太郎(真之輔さん)に冬次郎(愛之介さん)、同郷出身と分かって兄弟契りを結ぶ。ところが二人とも女スリ(あきなさん)にいいように手玉にとられて、財布をすられてしまう。そのスリを捕まえたのがこれまたやくざと思しき男、春太郎(春之丞さん)。三人が話をしている間にその女スリに逃げられてしまう。挙げ句の果てに春太郎も財布をすられてしまっていた。

場所は変わって、船宿。その主人(京之介さん)は実はスリの窃盗団の親玉だった。春太郎からすった財布を一味に持ち帰るが、中身をみるとあきれるほど少額だった。女スリは仲間から外れて堅気になりたいというが、親分は彼女の掌を突き通し、やっと放免する。その様子を奥でみていたのが、窃盗団の飯炊きをしていた女スリの母親(寿美さん)だった。二人で船宿を逃げ出す。

女スリの母親は娘に持病の癪の薬を買いに行かせた隙に大川に飛び込んで死のうとする。そこへ春太郎がやってきて、それを止める。ここからが寿美さんの独断場。言いたい放題、やりたい放題で春之丞さんを手玉にとっていました。女スリの母親役でしたが、どうみても父親でした。弁天小僧なみにすね毛をだして、春之丞さんに絡むので彼もほとほと困ったのでは。めったにない「大役」だったので、寿美さん張り切られたのですね。

悪い窃盗団の親玉に仕返しをしようと、女スリの母親と春太郎は船宿に乗り込む。初めは言い逃れしていた親玉だが、正体がばれると態度が一変。二人を縛り上げる。しかしそこへ女スリから話を聞いて同情した秋太郎、冬次郎の二人が助っ人に駆けつける。立ち回り(といってもいつもの緊張感溢れるものではなく、形だけのもの)があるが、そこに出てきたのは代官の子息だった。これが実は春太郎の正体。窃盗団一味を一網打尽でお縄にして、めでたし、めでたし。

どうってことのないお芝居なんですが、役者それぞれの個性がよく出ていました。真之輔さんの「みかけはちょっと軽めだけど、でもけっこうシリアスで優しい」という秋太郎、愛之介さんの「自分の格好よさを自覚しているものの、自意識過剰には決してならない冷静な」冬次郎、こういうキャラがきっちりと立ってきていました。春之丞さんの「いいかげんな遊び人風情でいながら、実は突き抜けた人なのよ」というキャラも立っていました。あくまでも個人的妄想ですので、念のため。

舞踊ショーは控えていません。いちばん感激したのは真之輔さんの「生きとし生ける物へ」でした。この含蓄のある歌詞に負けないほど、深く深く踊り込まれました。感動!

それと、第1部の顔見世ショーの冒頭の男性群舞、「武田節」も今までに見たことののない舞踊で、すばらしかった。紋付袴に扇を持っての踊りでした。最後に登場した春之丞さんだけが茶髪の鬘で、「息抜き」的な要素が加わって面白かった。

ラストの桑田の「東京」に合わせての団員全員での群舞も見応えありました。このショーも初めてのものでした。全体に暗めの舞台背景、生々しく浮かび上がるピンクのバラが、東京のもつ美しさと危うさとのないまぜになった魅力を象徴していました。地味でいて派手な舞台装置でした。