yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

NHK 『にっぽんの芸能 芸能百花繚乱「尾上紫・尾上京 おんな二人あで姿」』

朝5時からの再放送を観た。先日歌舞伎若手役者の踊りをみて失望したので、あまり期待をしないで見始めたが、みごとに裏切られた。松竹座の「團菊祭」で尾上クランの実力に圧倒されたところだったが、尾上紫さん、尾上京さんのお二人の舞踊にも感銘を受けた。彼女たちを指導したのは尾上菊之丞さんということだが、お名前からして菊五郎直系の方とは察しがつく。NHKサイトには以下の紹介文が載っていた。

尾上紫(おのえ・ゆかり)、尾上京(おのえ・みやこ)、若手の女性舞踊家2人の競演。東京育ちの紫と京都育ちの京は、同い年で同門、初舞台も同じ3歳。小さいころからライバルかつ大親友として、日本舞踊の道を歩んできた。紫は人気演目「鷺娘」を、京は上方色にあふれた「鐘ヶ岬」をそれぞれ踊る。また2人で谷川俊太郎の詞による舞踊「水」を披露。*1

尾上紫さんの「鷺娘」はどこまでも優美な舞の中に、鷺娘のはかなさ、哀しさを繊細に描出していた。息絶える直前袖を振る様に、振り付けを超えた踊り手の情感がたっぷりと表現されていて、秀逸だった。

尾上京さんの「鐘ヶ岬」は上方舞踊らしく地唄に合わせたもので、遊郭に生きる女の哀しみを舞いながらもその中に女の意気地をきりっと踊りこんでいて、これまた秀逸だった。これも踊り手の個性が際立って出ていたように思う。詠われたのは地唄の人間国宝の富山清琴さんで、艶があり、奥行きを感じさせる声がすばらしかった。私にとっては初耳の方だが、機会があったらまた実際の演奏を聴いてみたい。*2

紫さん、京さんお二人の創作相舞、「水」もちょっとした驚きだった。日本舞踊もこういう「冒険」をするのだと。ただ私が知らないだけのことで、いろいろな挑戦の上に成り立ってきたのが日本舞踊なんでしょうね。仕舞の型に近い、どちらかというとしなやかというよりも男性的なメリハリの効いた振り付けになっていた。陰と陽、清と濁、といった対照的な質(entity)を雑味を排して抽象的に表現する、これは能の世界に近いけれど、それを若い女性二人が舞うというところに、大げさにいえば意味があるように思った。