yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

芝居『法界坊の恋』in 劇団花吹雪@弁天座 3月30日千秋楽

3週間も前に席を予約していたのに、後ろから3列目の補助席でした。でも文句はいえないかも。入りきれずにロビーにまで人が溢れ、普段は使わない2階にも人が入り、花道にも人が並ぶという盛況でしたから。

こういうすざまじい弁天座の入りは初めてではありません。ちょうど1年前、去年の3月、恋川純さんの誕生日もこういう入りでした。そのときは知り合いの方が席をずいぶん前に取ってくれたのですが、それでも桟敷席でとても窮屈な思いをしました。

さすが「お芝居の花吹雪」、芝居『法界坊の恋』から始まりました。喜劇のような悲劇のような、「なにこれ?」というお芝居でしたが、こういうの春之丞さんのキャラですね。また「花吹雪」さんのキャラでもあります。このなにかいい加減さが(といってもきちんと計算されているのでしょうが)なんとも上方的で魅力なんですね。

このお芝居、どう形容したらよいのか、いろいろなもののコラージュになっていました。要するにごった煮です。『お富与三郎』という春之丞さん主演のウルトラ級におかしいお芝居があります。もちろんこれは例の『切られ与三』の喜劇バージョンで、最後はドタバタで終わります。去年の11月に新開地で観て、春之丞さんの喜劇の最高傑作だと確信しています。DVDも手に入れ、気分がめげた時に観ているほど、好きです。

この『法界坊』、その逆バージョンというか、それをまた換骨奪胎して違った喜劇に仕立てています。第一部は一見フツウの悲劇のように始まるのですが、第二部になると喜劇全開です。

第一部は悪親分の春之丞さんが芸者ひな菊(恵介さん)を身請けしようとしますが「自分には間夫がいる」と断られます。春之丞さんは怒って、たまたまそこへ顔をだしたためひな菊に間夫に仕立てられた真之輔さんを折檻し、集金した50両まで巻き上げてしまいます。落ち込む真之輔さんにその芸者は50両を立て替え、3年経って年期があけたら真之輔さんのいる浪速の土地へ尋ねて行くという約束をします。ここまで悲劇調。

第二部はまるで吉本喜劇!冒頭シーンからまるでそうでした。真之輔さんの奉公する浪速の大店の店先で番頭(京之介さん)と丁稚(寿美さん)が「かけあい漫才」をしています。このお二人、『お富与三郎』でもそうでしたがこういう場面だと最強コンビですよね。店の主人の娘(あきなさん)は真之輔さんが好きなので、主人は真之輔さんに婿入りをするように頼みますが、断られます。三年経ったら尋ねてくるはずのひな菊を待っているというのです。

そこへひな菊が尋ねてきますが、主人は真之輔さんが死んだと嘘をついて追い返そうとします。墓参りをするとひな菊がいうので、四天王寺の寺を教えます。主人と娘は先回りをして、寺にニセの墓を立てるよう頼むといって出かけます。このあと真之輔さんが掛け取りから帰ってきて、番頭と丁稚から仔細を聴き、彼もまた寺へ駆けつけます。

寺にやってきた主人、墓守をしている法界坊に30両を渡して新墓の建立を頼んで帰ります。そこへひな菊がやってきて、法界坊の顔をみて驚きます。彼こそこの事件の発端をつくった親分のなれの果てだったからです。親分はひな菊をてごめにしようとします。抵抗するひな菊。でもあやまって墓石に頭をぶつけてぐったりとなります。死んだと思って慌てますが、それでもひな菊に覆い被さる法界坊役の春之丞さん。着物の裾をめくたりやりたい放題!恵介さんの足を出して「俺とおんなじくらいすね毛あるやん」とかいったり、後ろだったのでよく聞こえなかったんですが、かなり際どいこと、おっしゃっていたような。

勘ぐるに、この場面をやりたかったがために恵介さんをひな菊に仕立てたのでは?この芝居、すべて春之丞さんの演出だと確信しました。

真之輔さんがやってきて、春之丞さんとの立ち回りになりますが、真之輔さんの短刀で春之丞さんは切られてしまいます。人を殺してしまったと慌てる真之輔さん。そこへ主人がやってきて、「人殺し」と叫んで逃げて行きます。ところが気を失っていただけのひな菊が目を醒します。法界坊を殺してしまったと思い込んだ二人は心中しようとします。

そこへお堂の中から死んだはずの法界坊が出てきて、主人の知らせでかけつけてきた役人にお縄になり、ひな菊と真之輔さんは助かります。

なんともワケが分からないでしょう?ほんとに「ケッタイな』お芝居でした。でも楽しかった。どんでん返しに次ぐどんでん返し、思いっきり笑えました。春之丞さんのぶっとびぶり、暴走が彼らしくてよかったですし、真之輔さんがなんとかその暴走を止めようとされているのも、毎度のことながらほのぼのとしました。

そして、歌舞伎、浄瑠璃を強く意識されているのがよく分かりました。寿美さんが「去年の秋の患いに」を何度も口ずさまれたのもその例の一つです。歌舞伎調をアドリブ的に取り入れておられて、こういうのは初めて見る歌舞伎のアナロジーでした。

舞踊ショーも「花吹雪」らしさが目一杯出ているショーでした。春之丞さん、真之輔さんのお二人に共通しているのは、客への気遣いです。二階席を見上げて手を降られたり、桟敷席に座っている人たちに「足のばされへんから、つらいやろ」とおっしゃったり、気遣いされるのが一度二度ではないのです。それがそのままお二人のお人柄を表しています。

この親近感、親しみやすさ、温かさ、そして何よりも愛嬌が春之丞さん、真之輔さん、そして花吹雪のカラーですね。また大衆演劇の醍醐味もそこにあるわけで、「劇団花吹雪」は大衆演劇のトップにくる人気劇団というだけではなく、大衆演劇をこれからも牽引して行く劇団なんだと実感しました。

何度も「5月には朝日にきてな」とおっしゃっておられました。そんなんおしゃっらずとも行きますがな。

大入りは最近の記録だと思いますが70回だそうです!ゲストの来訪なしで、しかも真之輔さんが大丸劇場での『七つの顔をもつ龍馬〜誰が龍馬を殺したか〜』への出演で不在だった期間があったにも関わらずですので、大快挙ですね。