yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

スーパーオペラレッスン バーバラ・ボニーに学ぶ歌の心(8)

先週、たまたま聴いて感動した番組である。先週の金曜日は準備万端整え、テレビの前で待っていた。

先週は中途からだったが、今回は全部聴くことができた。やっぱりすごい「レッスン」だった。テクニックはもちろんだが、それ以上のものを生徒に伝えるのに彼女が使ったのは、身体のみならず、身体を媒体とする心そのものだった。だから分野を超えて観ていた人の心を打ったのだ。このレッスンについての多くのブログがそれを証明している。

今回生徒として登場したのは、前回からおなじみのカルロス・オスナさん。『カルメン』中のドン・ホセのアリア「花の歌:おまえが投げたこの花は」のレッスンを受けていた。彼はよく通る美声で、ボニーさんは惜しみない賛辞を送っていたけれど、それでもやはり直していた。彼の歌うときの姿勢が悪いというのだ。それを矯正しただけで、彼の歌声に伸びが出て、より豊かに響いた。ボニーさんの指導がよかったのもあるけれど、オスナさんが的確にボニーの注意を捉え修正した結果である。つまりこのオスナさんがそんじょそこらにいる歌手志望者ではなく、ほとんどプロ級の歌手だったということではないか。

そしてこの彼に対して、ボニーさんは「メトロポリタン歌劇場でも通用する歌声だから歌劇場のドアをノックするように(応募するように)」と励ましておられた。こういうところ、親身になって「生徒」の将来を考えられる方だというのが分かる。

そして次の生徒のネッタ・オルさんへの指導も的確だった。シューマンの歌曲集、『リーダークライス』からの「静けさ」を歌ったのだが、彼女の場合も姿勢を少し直しただけで歌声に響きが出てきていた。オルさんにとっては母語のドイツ語ということで、逆に意識的であることが難しかったのではないかということも、指摘されていた。

ボニーさんがオルさんに求めたのはうらわかい乙女の雰囲気を全面に出すということだった。生徒のオルさんがその年齢に見合ったように、伸びやかに楽しくかわいらしさを全面に出して「演技」して欲しいということなんですね。このあたり、個々の生徒のもっともよいところを引き出すことをいちばんに考えているボニーさんンの姿勢がよくあらわれている指導だった。

一人一人がその個性を際立たせること、得意なところを全面に出すことで、他の一流の歌手とは違ったものまねではない「よさ」が観客に伝わるはずだというのが、ボニーさんの指導の基本になっていることが分かった。