yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

マイケル・ムーアの問題作映画 1月11日

今日は新年明けの授業初日だったので、「留学支援コース」ではマイケル・ムーアの『ボウリング・フォー・コロンパイン』
Bowling for Columbine (2002年)を学生とみた。このクラスではyoutubeでのアメリカの大学の授業を録画したものを教材にしているが、今日は例外である。

アメリカ、アリゾナ州で起きた銃乱射事件が2日前にあったので、学生に注意を喚起するためでもある。日本のように銃が規制され、普通は持てない社会からみると、アメリカが銃社会であることが理解できないに違いない。その証拠が1992年におきた服部君事件である。日本からの留学生の服部君(高校生、当時16歳)がルイジアナ州のバートンルージュで撃たれ死亡した。

銃規制は常に、とくに大統領予備選のときに話題になる。でもそれが実現したことはない。この映画の中でも全米ライフル協会(NRA)会長のチャールトン・ヘストンが意気盛んなところを見せていた。それにしてもムーア監督のトリックスターぶりには感嘆するしかない。この手で縦横無尽、敵対する相手からもなんらかのコメントを引き出してしまう。そしてそれを自分のテーマにあうよう編集してしまう。インタビューされた相手は完成した映画をみて、さぞかし地団太ふんでいることだろう。自分の発言は結局はムーアの映画に益するように使われてしまっているから。


私はとくにムーアのファンでもないし、そのテーマ自体を高く買っているわけではないが、それでもアメリカ社会のある側面を見せるのに彼の映画は非常に有効なので、留学を予定している学生には必ず見せることにしている。他にも、『ザ・ビッグワン』(アメリカ資本主義を批判したもの)、『華氏911』(ブッシュジュニアの再選を阻もうとしたもの)、『シッコ』(アメリカの健康保険の仕組みを批判したもの)、どれもが「問題作」である。ブッシュ嫌いのアメリカ人の友人は『華氏911』を5度もみたそうな。私にもしつこく勧めたけれど、天邪鬼で、Pro-Bushだった私は無視した。

とはいいつつ、評価しているものもある。いちばんのお気に入りは『シッコ』。めちゃくちゃ面白い。本当に良く出来た映画なので、この影響でオバマ大統領が議会に提出したアメリカ初の国民総健康保険制度が成立すればいいのにと思っている。レッセフェールの共和党は反対しているし、賛成する見込みはあまりないけど。

アメリカには日本のような健康保険がないというと、学生はびっくりする。私もアメリカで住み始めて驚いた。仕方なく学生用の健康保険を「買った」。1997年当時1年間で(歯の治療の保険には加入せず)約900ドルだった。これは学生用の保険なので破格に安いのである。普通の人だと年間安くてひとりにつき4000ドル以上のものを保険会社から「買う」のである。保険を買えない人はまともな治療が受けれないことになり、これは実に悲惨である。ムーアはそれを痛烈に批判したのだ。アメリカに住み続けることを躊躇する日本人がいるけれど、理由の一つがこれだったりする。たしかに、病気をしたり怪我をしたりしたとき、保障がおぼつかないというのは不安だから。